*season 9*
「………何故、屋上を選んだ。」
「愚問だな、お前ならわかるだろ。」
「………咲が命を絶とうとした場所だからか。」
「ご名答。」
お前が自分自身に向き合うには
打って付けの場所だろう。
テニス部の内情は
柳から聞いて大体わかった。
だが、堅実過ぎる程の真田が
咲を裏切ったという事は
それ相応の理由がある筈だ。
「お前等テニス部の内情については、柳から聞いた。」
「……。」
「あの時お前は、もう咲とは関係ないと言ったな。」
「……あぁ。」
「何故だ。その理由を教えろ。」
「………。」
「真田、この状況から抜け出すには…お前が変わるしか方法はない。」
「っ……。」
「お前は、このままで本当にいいのか?直に、テニス部そのものを失う事になるぞ。」
「そんな事は……俺とて……。」
「あ?」
「そんな事は、わかっている!!!」
「わかっているなら、何故変わろうとしない。」
「……貴様に、何がわかる。」
「何だと?」
「部外者の貴様に、何がわかると言うのだっ!!」
真田は
怒りと苦しみに満ちた表情で
私を睨みつけた。
拳は小刻みに震えている。
怒りの矛先は
おそらく私ではない。
わかっているのにどうしようも出来ない
自分自身に不甲斐なさを感じている。
だが、そんな事は関係ない。
お前が手をこまねいている間にも
取り返しの付かない方向に事は進んでいる。
この負の連鎖を断ち切るには
お前が変わる他無い。
「……わかるかよ。」
「何だと…。」
「惚れた女一人もまともに守れねぇ奴の気持ちなんざ、わかるかよ。」
「貴様っ……。」
「私はお前が咲の事を裏切ったとは思っていない。」
「……。」
「そうしなくてはならない理由があったんだろ。」
「っ……。」
「お前が前に進もうとするのなら、私は力になる。」
「くっ……俺は……。」
「どうするかは、お前次第だ。」
大丈夫だ。
お前は必ず抜け出せる。