*season 9*
夕方
テニス部の練習が終わった頃を狙って
私と瀬名はコートに向かった。
昨日の事があってからなのか
どことなくピリついた雰囲気に包まれている。
それにしても……。
「東堂が真田を、ねぇ……。」
「澪、どうしたの?」
「いや、何でもねぇ。」
「あ、蓮二。」
「待たせたな。」
「私達も今来たところ。」
「もう車は来てる、気を付けて帰れよ。」
「澪も気を付けてね、東堂さんは私達を…。」
「あ?誰に言ってんだよ。」
「はいはい、また明日ね。」
瀬名と蓮二は
裏門の方に歩いて行った。
さてと
こっちも仕事に移りますか。
「………来た来た。」
「あっ……片桐、先輩……。」
「貴様、ここで何をしている。」
「仁王先輩っ、私怖い……。」
「大丈夫やき、お前は俺の後ろに隠れてんしゃい。」
「はいっ……。」
「くくっ……お前、相変わらず演技下手くそだな。」
「片桐さん!桜良さんに謝って下さい!」
「うるせーな、外野はすっこんでろ。」
「てめーっ!柳生先輩に……。」
「おい、真田。少し面貸せ。」
「……何だと。」
「真田先輩っ、行っちゃダメですっ……片桐先輩は桜良をっ……。」
「………。」
すぐに断らない所を見ると
こいつも何か思う事があるって訳か。
真田弦一郎。
瀬名の情報だと
テニスの腕は確かなもので
全国有数の実力から”皇帝”と呼ばれた男。
性格は頑固一徹。
勝つ為なら部員への鉄拳制裁も厭わない。
真っ直ぐ過ぎる程、真っ直ぐな男だ。
真田は必ず抜け出せる。
咲が認めた男だ。
私は、お前を咲の元に返す。
きっと、それが
咲の願いだと思うから。
「真田、無理強いするつもりはない。来るか来ないかはお前が決めろ。」
「……。」
「真田先輩っ……。」
「………わかった。」
「……場所を変えるぞ。」
「副部長、何でこんな奴にっ!」
「心配するな、俺は大丈夫だ。お前達は先に帰れ。」
「真田君、気を付けて下さい。」
「あぁ、桜良を頼むぞ。」
鬼が出るか蛇が出るか。
こいつと柳さえ抑えられれば
他の奴等は雑魚だ。
東堂。
お前の化けの皮が剥がれるのも
もう時間の問題だな。