*season 9*
「瀬名、今日から柳と帰れ。」
「ちょっと、澪!さっきからっ……。」
「何勘違いしてる。」
「え?」
「柳が私達と接点を持った事は直にバレる。あの女の事だ、今度は柳に危害を加えようとしてもおかしくないだろ。」
「護衛役、という事?」
「そういう事だ。」
「不要だ。自分の身ぐらい自分で守る。」
「馬鹿か、お前。」
「……何だと。」
「金を持ってる奴がキレたら、何をして来ると思う。」
「それなら尚の事、京華が危険だ。」
「安心しろ、朝比奈の部下をお前達に付ける。」
「朝比奈?」
朝比奈は私の専属ボディガードだ。
奴は元々
警視庁警備部警護課に所属していた。
所謂、SPというやつだ。
故に、若い割に堅物だ。
父からの指示もあって
私以外の護衛には付こうとしない。
一番の腕利きだから、本当は奴を付けたいが……。
朝比奈の部下は精鋭揃いだ。
そこらのチンピラ程度なら
束になった所で手持ち無沙汰だろ。
「帰りに裏門に車を待たせる、柳の部活が終わり次第二人で帰れ。」
「うん、わかった。」
「………何故、俺にそこまでする。」
「……何が言いたい。」
「俺達は咲を追い詰めた張本人だ。お前は俺達が憎い筈だ。」
「……。」
「それなのに、何故俺を守る。」
「てめぇ、何勘違いしてやがる。」
「澪……。」
憎いさ、殺してやりたい程にな。
法律なんてものさえ無ければ
今すぐにでもお前等を殺してやりたい。
私の大切な人を……咲を
あんな事になるまで追い込んだのだからな。
「お前を許したから守る訳じゃない。」
「ならば、何の為だ。」
「咲が目を覚ました時に、償わせる為だ。」
「……。」
「私はお前等を絶対に許さない……だが、本来それを決めるのは咲自身だ。」
「……そうだな。」
「咲が目を覚ます迄は、お前等に何かあったら困るんでな。」
「澪……。」
「それ以上、てめぇに言う事はない。怪しまれない内に部活に行け。」
「……わかった。」
ガラッ
「ふん……。」
「澪、ありがとう。」
「何がだよ。」
「蓮二の事、守ってくれて。」
「だから、さっき言っただろ。咲が目を覚ます迄は……。」
「それでも、ありがとう。」
「……言ってろ。」
柳にとって瀬名の存在は
凄まじく大きな救いだった筈だ。
私だったら
こうはいかなかった。
さあ、次は真田だ。