*season 9*

―瀬名side―










”お前達に話す事は無い”








そう言った蓮二の顔が
凄く苦しそうだった。











蓮二はもう気付いてる。

自分達がどんな過ちを犯したのか。






あの時の蓮二はすぐに言葉が出なかった。

間を作った訳じゃ無い。
言葉が出てこなかったの。






何て返したら良いか
わからなかったからよ。












東堂のやり方は、一種の洗脳。

自分を傷付けて
それをあたかも相手がやった様に見せかける。

それを見た彼等は
そんな筈は無いと思いながらも
実際の状況証拠を見て、もしかしたらと考える。



そんな事を繰り返している内に
何が真実で何が真実ではないのか
正常な判断が出来なくなっていくの。


言わば、感情のコントロール。







そうなってしまうと
幾ら蓮二達でも洗脳から抜け出す事は不可能。

東堂が虐められている=守らないと
という、負のスパイラルに嵌っていく。






抜け出す為には根源を断つ事。

すぐには難しいけど
現状での矛盾点を一緒に探す事が出来れば
蓮二はきっと自分の力で前に進める。









そう、信じたいの。








「……ねぇ、澪。」


「何だ。」


「蓮二の事、私に任せてくれないかな。」


「………。」


「蓮二なら、見極められると思う。」


「……根拠は。」


「………そう、信じたいの。」


「………そうか、お前がそう思うならそうなんだろ。」


「澪……信じてくれるの?」


「あぁ?私が瀬名を信じなかった事、一度でもあったか。」


「澪……ありがとう。」





澪は、蓮二が……。

テニス部の人達が憎いはずなのに
私の事を信じて踏み留まってくれる。







私だって
咲を追い詰めた彼等が憎い。









あんなに純粋で優しい子が
自ら命を絶たなくてはいけない程に
追い詰められたんだもの。


憎くない筈ないじゃない。











だけど。








私にとって蓮二も
澪や咲と同じ位大事な人だから……。













だから、私が止める。
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