* season 1 *

―日吉side―




昨日部長に借りた本
結構面白かったな。

他の人達が登校する前に
返しに行こうと思ったけど
少し早すぎたか…。




「ん?電気ついてる。」


「ところでさ……私見たんだよね。」




あれは
冴水先輩と…


こんな時間に何してるんだ?




「え?」


「冴水さんが男子テニス部の部室に入っていくとこ。」


「!」


「どういう事?」


「マネージャー希望の子沢山いたのに、何で来たばっかのあなたがマネージャー?」


「そ、それは……。」





アイツら…

責めるなら
冴水先輩じゃなくて部長だろ。



だから女は嫌いなんだ。

女子マネージャーなんか入れたら
それこそ面倒な事になる。



だけど
冴水先輩は違った。

彼女は的確に仕事をこなす。
それに俺達の事をよく見てくれている。
一切の感情を挟まずに。


それに屋上での事。

俺はあの涙の意味を
落ちそうになった事への恐怖心だけとは
どうしても思えなかった。




彼女のことが知りたい。
何故かそう思う。





「体でも使ったわけ?」


「え!?あなた達、中学生の割に凄い事言うのね…。」


「あなたも中学生でしょ。」


「そうなんだけど…。」


「とにかく、早く辞めてよね。」


「え?何で?」


「何でって、ふざけないで!」




バンッ




「……。」




冴水先輩
何で言い返さないんだ。


普通の女子なら
あんな事されたらビビったり
泣いたりするはずだろ。


それなのに先輩は
凄く冷静な目をして…。




「…じゃあ聞くけど。」


「え?」


「マネージャーになる事に、何であなた達の許可が必要なの?」


「そ、それは…。」


「それに、私をマネージャーにしたのは跡部君だよ。文句があるなら彼に言って。」


「っこの!!」




先輩
何で避けようとしないんだ!


くっ…。

間に合うか!?




「あんた達、何してんの。」


「っ!!」


「あれ、日吉君どうしてここに?」


「いや、部長に借りた物があったので登校時間になる前に返そうと思ったんですけど…。」






俺は先輩と彼女達の間に
割って入った。


一対三か。

俺はこういう卑怯なやり方が
一番気に食わない。
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