*season 7* fin










あれから二年後。









私は地元を離れ
東京に自分の店を出した。








お母さんに言われたの。
私は一度、ここを離れた方が良いって。

















合宿所に迎えに来てくれた母の車の中で
涙が枯れる程大泣きした。


















もう全てがどうでも良くなった。



















私は幸せになれないのだと
お母さんに喚き散らした。


















だけどお母さんは

”あなたは幸せになる為に生まれてきた”

そう何度も言ってくれた。

















だから、もう一度だけ。
















もう一度だけ
前に進もうと思ったの。















「ありがとうごさいました。」











最後のお客様を接客し終え
表の札をCLOSEにする。



一人でお店を回す事にも慣れた。










最近は
月さんや皆が頑張っているニュースを
よく耳にするようになった。



月さんや平等院さんは高校を卒業後
そのまま海外でプロになった。


毛利さん、種子島さん、遠野さん、大曲さんは
大学に行きながらテニスを続けているらしい。


君島さんは相変わらず有名で
テレビで彼を見ない日は無い。



鬼さんや入江さん、徳川さんも
皆元気にしてるのかな。











もう、二度と会う事はないけどね。













「よし、後は……。」











カランッ












「あ、すいません!本日の営業は……………。」


「閉店後にすまない。向日葵を一本、貰えるだろうか。」


「え………どう………して………?」


「大切な女性に、プレゼントしたいんだ。」


「っ………かしこまり、ました……。」



















閉店後の店内に入って来たのは











忘れようとしたけれど
ずっと忘れられなかった……。

















大好きで、死ぬ程会いたかった人。
















「ラッピングは、致しますかっ……?」


「頼む。」


「……かしこまりました。」










不思議な程に静かな時間。








この世界には
他には何も存在していない様な
それ程までに静かで穏やかな時間が流れる。










「お待たせ、致しました……。」


「ありがとう、礼を言う。」


「いえ、ありがとうございました。」

















いつも以上に頭を深く下げる。
















顔を上げた時には
彼はもういない筈だ。

















これは、幻だ。




















「………………月。」


「っ………どうしてっ………まだいるのっ?」


「会いたかった……あの日、お前がいなくなった日からずっと……。」


「月さんっ………。」


「俺はプロになった、お前に恥じない男になる為にだ。」


「だってっ……凛花さんはっ……?」


「お前が合宿所を去ってすぐ、凛花に話を聞いた。」


「え……?」


「お前を傷付けてすまなかったと、泣きながら謝っていた。」


「っ……。」


「元はと言えば、俺が原因だ。」


「そんな事っ……。」


「お前を傷つけた事を、許してくれるか。」


















月さんだ…………。



















本当に月さんだ。





















ずっとずっと、会いたかったっ……。















「月さっ………月さんっ………。」










ギュッ










「月っ………ずっと、こうしたかったっ……。」


「ふぇっ……会いたかったのっ……ずっとっ……。」


「愛してる……もう、離さないっ……。」


「うんっ……うんっ………。」















夢じゃない。













月さんがここにいる。
60/66ページ