*season 7* fin
思えば
俺がボールを飛ばした
あの草むらが始まりだった。
自分のミスで飛ばしたものを
他人に取りに行かせるのもおかしく
自分で取りに行った。
そこで彼女が
月が、草むらの中から顔を出した。
彼女の背丈よりも高く生い茂った草の中から。
俺を見て少し驚いた後
何を思ったのか、笑みを零した。
愛らしいと思った。
彼女の屈託のない笑顔を見ていたいと
純粋に……心からそう思ったのだ。
月に触れたくて
自分ではどうしようも無い程に……。
理性なんて言葉は
存在しないのでは無いかと思う程に
彼女が欲しくて堪らなかった。
それなのに
何故、月を泣かせてしまう。
俺は、お前に笑っていて欲しい。
「………月?」
「月さん…………?」
ギュッ
「あっ…………。」
「月っ………。」
「………。」
俺達が初めて唇を重ねた場所。
月は、思い出の場所にいた。
涙を流しながら
煌々と咲き誇る向日葵に手を添えて。
「っ……ふぅ……ふぇっ……。」
「月……何故泣く……。」
「うわぁぁっ……。」
「月、俺の顔を見ろ。」
「ごめんっ……なさっ………。」
「月……?」
「私が全部悪いのっ……私はっ………。」
「落ち着け、月っ!」
「本当はっ……月さん……大好きだよっ………。」
「っ……。」
気付けば
俺は月に唇を重ねていた。
脆く、今にも崩れそうな彼女を抱きしめる。
息が上手く吸えず
呼吸の荒くなる彼女に構わずに
俺は彼女の舌に絡み続けた。
首に回された月の腕はか細く
苦しさのあまり立てられた爪さえ愛らしく思う。
「っ………はぁっ………つっ……きさっ………。」
「月っ………。」
「んっ……もっ……くるっ………し……。」
「だめだ、離さないっ……。」
今この手を離したら
お前がどこかに行ってしまう。
何故か、そんな気がしてならない。
怖い。
お前を失う事が。
俺は、何故そんな事を思うのだろう。
月は目の前にいる。
それなのに………
何故そんな事を思う。