*season 9*
次の日。
再び校門横で
慶太と慎二を待ち伏せる。
あの二人からは確信的な部分まで
聞き出せていないからな。
慶太も慎二も
立海テニス部に憧れて入部したんだろう。
いざ入部したは良いが、この様じゃな。
「……来たか。」
「えぇ……っ澪、隠れて!!」
「うぉっ!」
「しっ、黙って……。」
「何だよ……。」
「あれ、あの子達だけじゃないわ。」
「ん?あれは……。」
慶太と慎二の二人と
柳と、切原……だったか?
あいつ等
こんな時間に何やってる。
「瀬名、動画撮れ。」
「了解。」
「何があっても、お前は撮り続けろ。」
「……何する気?」
「それは、奴等の出方次第だ。」
見て察するに
あの二人の監視役ってところか。
昨日あんな事があったんだ。
私達と接触した事のある
慶太と慎二を見張るのは当たり前の事だ。
「………今日はいないようだな。」
「そうみたいっすね。」
「柳先輩……切原先輩……俺達っ、本当に何もっ……。」
「あぁ!?だったら何で、片桐先輩達があそこまで勘づいてんだよ!!」
バシッ
「ぐぁっ!!」
「慶太っ!」
「うぅっ……。」
「切原先輩っ!どうしてこんな事っ……。」
「あぁ?お前等が桜良を嵌めようとするからだろ。」
切原は
慶太の腹部に蹴りを入れる。
おい、正気か。
何の落ち度もない後輩に………
そこまで、奴等は腐ってんのか。
「一発じゃ気が済まねぇ……。」
「切原、先輩……?」
「二度と桜良を傷つけんじゃねぇっ!」
「っ!!」
「っ慎二!!」
パシッ
「そこまでだ。」
「ぐぅっ!」
「片桐先輩っ……。」
「慶太、男なら泣くんじゃねぇ。」
「っ………はいっ………。」
「ぐぁっ……手がっ……離せっ………。」
「おい、切原。何て顔してんだよ。」
「何……だとっ……。」
「やるって事は、やられてもいいって事だろ?」
「片桐、赤也の手を離せ。」
「………ほらよ。」
「っ………てめぇ、ふざけやがってっ!!」
「やめろ、赤也。」
「だけどっ………。」
「片桐は合気道の師範代だ、俺達が束になっても敵う相手では無い。」
「なっ……。」
「慎二、お前は慶太を保健室に連れて行け。」
「は、はい!」
「勝手な事言ってんじゃっ………。」
ガンッ
「ぐぁっ!」
「お前はすっこんでろ、切原。」
柳の奴……
私達がいる事をわかっていたな。
柳の立ち位置は
ちょうど瀬名から死角になる場所だ。
音声は撮れても決定的な場面は撮影出来ない。
ただ……。
瀬名がそこにいればの話だがな。
「蓮二、甘いわね。」
「京華………場所を移動していたのか。」
「ねぇ、蓮二。」
「……何だ。」
「いつまで、こんな事続けるの。」
「………。」
「こんな状況がおかしい事位、あなただってわかっている筈よ。」
「………。」
「私の知っている蓮二は、そんな残酷な事出来る人じゃないっ……。」
「………おい、黙りかよ。」
「………お前達に話す事は無い。」
「蓮二……。」
「赤也、行くぞ。」
「けっ……。」
柳の野郎……。
瀬名にあそこまで言わせて
何も感じなかったのかよ。
それにしても、気になる。
切原の場合は馬鹿で単純だ。
故に、東堂の演技を見抜けないとしても
特に何の不思議も無い。
ただ、柳は別だ。
あそこまで勘の鋭い男が
東堂如きの猿芝居を見抜けない筈がない。
どうも腑に落ちねーな……。