*season 9*
その後。
私は瀬名と共に自宅に帰り
専属医に怪我の治療を受けていた。
いつも冷静沈着な瀬名も
流石にあの時は取り乱していたな。
だが、収穫はあった。
気に入らない人間に対して
東堂は目の前で自傷行為をして
それをそいつのせいにする。
そして真田達にそれを見せ
対象の相手を陥れていたんだ。
多分、咲も………。
「まったく、お嬢様は無理をなさる…。」
「悪いな、北条。」
「謝るのは私では無いですよ、お嬢様。」
「っ……。」
「瀬名、泣くなよ……悪かった。」
「泣いてないっ……。」
「泣いてんじゃねぇかよ……。」
「やれやれ、瀬名様も苦労される。」
「北条、手間を取らせたな。下がっていいぞ。」
「それでは、失礼します。」
ガチャ
「もう、あんな無茶しないでっ……。」
「あぁ……悪かった。」
「澪まで、失うかと思った……。」
「誰が死ぬかよ、あんな程度で。それに……。」
「え……?」
「咲が目を覚ますまでは、私達が死ぬ訳にはいかないだろ?」
「澪………そうね。」
「だが、やっと化けの皮が剥がれたな。」
「えぇ、あそこまでするとは思わなかったけど…。」
「あ?逆だろ。」
「え?」
「あの程度しか出来ねーんだよ、あいつは。」
「……。」
「あいつは嫉妬深くて、自己顕示欲の塊だ。その割に気が小さくて、あの程度の事しか出来ない。」
「……自分では手を下さず、レギュラー達を動かしている?」
「多分な。自分でやるなら、わざわざあんな回りくどい事しなくて済むだろ。」
「……。」
瀬名には言わなかったが
咲の体にはいくつもの打撲痕があった。
しかも、普段は着衣で見えない所にだ。
あれは
小柄な東堂が付けられる様な痣じゃない。
もっと重くて、強い力で付けられたものだ。
それは、多分
テニス部の奴等にやられたんだろう。
どれだけ痛かったか。
どれ程怖かったか。
咲、ごめんな………。
「明日から、必ず東堂は仕掛けてくる。」
「………でしょうね。」
「……気をつけろよ。」
「澪……誰に向かって言ってるのよ。」
「お前だよ。」
「私だって一応、合気道の有段者よ。」
「お前……。」
「それに、あのお馬鹿さん達とは頭が違うの。」
「……くくっ、そういう負けず嫌いな所は相変わらずだな。」
「嫌いじゃないでしょ?」
「あぁ……最高だ。流石、うちの参謀だよ。」
私にとって
瀬名も大切な仲間だ。
万が一こいつにも
何かあった時は……ただじゃおかない。
さぁ、戦いの始まりだ。