*season 9*
放課後。
私達はテニスコート横のベンチで
奴等の練習風景を見ていた。
これはある意味
宣戦布告だ。
咲と私達が仲が良かった事は
奴等なら知っているはずだからな。
私達がここにいるという事は
咲の事について自分達が疑われているという事。
頭がキレるなら柳の事だ、それ位わかるだろう。
「相変わらず、東堂は座って応援してるだけか。」
「その周りを一年の子達が走り回ってるわね。」
「この状況を見て奴等は何も思わねーのか……ふん、とことん腐ってやがるな。」
「もしかしたら、咲も……。」
「あぁ……同じ事をされていた可能性がある。」
「だけど、それだけで自殺なんてしようとする子じゃないわ。」
「あぁ。こき使われたとしても、やっている事はマネージャーの仕事だからな。」
「なら、一体何が……。」
「あーっ!片桐先輩と瀬名先輩!」
コートの中から声をかけて来たのは
甲高い声をした東堂咲良だった。
レギュラーの奴等の視線が
一気に集中する。
こいつは人を選んで態度を変える。
私達は立海では有名らしいから
声をかけて来た理由は、どうせそこだろう。
東堂はコートを出て
私達の方に駆け寄って来た。
「瀬名、ボイスレコーダー。」
「了解。」
「先輩達、こんな所でどうしたんですかー!?」
「別に、私がどこで何していようが関係ないだろ。」
「えー!!先輩冷たいっ……あの二人には優しかったのに!けど、美人!」
「そんな事より、あなたはマネージャーよね?」
「はい!そうですよ!」
こいつの嘘くさい笑顔。
不快だ。
こういう性根の腐った奴を見ると
嫌でも反吐がでる。
こんな奴に騙されている
脳の無いあいつ等の事もな。
「おい。」
「何ですかぁ?」
「咲があんな事になった理由を教えろ。」
「澪っ!」
「え……どうして、私に聞くんですか。」
「どうしてだぁ?…くくっ、笑わせんなよ。」
「……。」
「お前等から、腐った臭いがプンプンしやがる。自分じゃわからねーだろうな……そのど真ん中にいるんだから。」
「…………何で、皆……あの女の事ばっかり。」
「……あぁ?」
東堂の声色が変わった。
俯いていた顔を
私達の方へと向きを変える。
そして……。
”お前達も敵だ”
声には出ていないが
確かにあいつの口はそう言った。
「東堂さん、あなた………。」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「………。」
「あなた、何をっ!」
「桜良を虐めるから、悪いんだよ?」
「あなた……。」
東堂はポケットから
カッターナイフを取り出し
手の甲を自ら切り付けた。
東堂の手から血が滴り落ちる。
東堂の悲鳴を聞いたのか
レギュラーの奴等が集まって来た。
それ以外の部員達も数名駆け寄って来た。
なるほどな。
これがこいつの常套手段か。