*season 9*
「なぁ、瀬名。」
「………。」
「おい、瀬名。」
「え……何?」
「何ぼーっとしてんだよ。」
「いえ、何でも……。」
「なく、ねぇだろ。」
「……。」
「お前がそんな顔してたら、咲が心配するぞ。」
「澪……うん。」
「それで?」
「今朝、あの子達に話を聞いていた時に……柳っていう三年がいたでしょ?」
「あぁ、あの糸目の奴か。」
「柳蓮二は、私の……幼馴染なの。」
「……何だと。」
あの男。
東堂を見ていた時は
笑ってを綻んだ顔を見せていたが
私達を見ていた顔は表情こそ変わらないが
嫌悪感剥き出しの雰囲気を出していた。
多分、それは…
咲の事で探りを入れようとした事を
あいつが勘繰ったからだ。
そこまでは理解出来る。
私を見る目だけが、そうならばな。
だが、幼馴染だった筈の
瀬名にも敵意を向けた。
「………。」
「蓮二はいつも冷静で、感情のままに動く事なんて一度もなくて……公平で、公誠で、誰かを陥れようなんて考える人じゃない。」
「瀬名……。」
「最近は、あまり顔を合わせる事もなかったけど……あんな顔を、私に向けた事なんてなかったのに。」
「……辛いなら、無理するなよ。」
「澪……。」
「遅かれ早かれ、あいつとも対峙する時が来る。」
「……。」
「お前が、わざわざ汚れ仕事する必要も無い。」
「……馬鹿にしないで。」
「瀬名……。」
「蓮二が道を踏み外したなら、私以外に引き戻せる人はいない。」
「……そうか。」
「そもそも、蓮二は賢い子よ。澪じゃ無理よ。」
「おい、どさくさに紛れて貶すんじゃねぇ。」
「ふふっ……澪。」
「あ?」
「ありがとう。」
「……ふん、らしくねー事言ってんなよ。」
「素直じゃないんだから。」
柳の事、覚悟を決めたんだな。
それなら、もう止めねーよ。
お前の後ろには
私がいる事を忘れんなよ。