* season 1 *
「んっ………精市……さん……?」
「ごめん、無理矢理………こんな事。」
「どうして……。」
「花菜は、あいつが………跡部が好きなんだろう。」
「あ………。」
精市さんさんの辛そうな顔。
もう私の気持ちに気付いてるんだ。
それなのに、どうしてキスなんか……。
こういう時
何て言えばいいのかな。
何て言ったら
精市さんを傷付けないで済むんだろう……。
「ふふっ、そんな顔しないで。」
「精市さん……。」
「言っただろ、俺は花菜の笑顔が好きなんだ。」
「……うん。」
「……ねぇ、花菜。」
「はい。」
「少しでも、君の心に…俺はいられたのかな。」
「……。」
「跡部よりも先に、君に出逢っていたら…俺の事を好きになっていたのかな。」
「っ……精市さん….。」
「何てね……。」
精市さんにこんな顔させたくない。
だけど
今の私にはどうする事も出来ない。
精市さんを安心させてあげられる
気の利いた言葉なんか思いつかない。
「……精市さんと食べたケーキ、凄く美味しかった。」
「え………?」
「あの子にケーキをあげた事に後悔はなかった。だけど、本当はちょっぴり悲しかったんです。」
「知ってる、凄い勢いで項垂れていたもんね。」
「見られていたんですね。」
「ふふ、可愛いかったよ。」
「もうっ……でもね、凄く嬉しかったの。」
「花菜……。」
精市さんが声をかけてくれて
一緒にケーキを食べて……。
あの日
精市さんと出逢えて良かったって
心の底からそう思える。
こんなに優しい人がいるんだって
あの時の私は、それだけで凄く嬉しくて。
私は精市さんと出逢えた事を
後悔なんて、してない。
「精市さん、私を好きなってくれて…本当にありがとう。」
「……感謝をするのは、俺の方だ。」
「え……?」
「花菜の笑顔にどれだけ勇気づけられたか…俺は君が笑ってくれるだけで、嬉しかった。」
「精市さん……。」
「だからこれからも、友達でいてくれるかい?」
「そんなのっ……当たり前ですっ!」
「ありがとう、花。大好きだよ。」
ありがとう、精市さん。
あなたに出逢えて、良かった。