*season 7* fin
「斉藤さんは……。」
「そうですね、そうして下さい。」
「お取り込み中、かな……。」
「ん?あ、瑞稀さん!すいません、また後で。」
「お忙しいところ、すいません。」
「体調はどう?まだあまり顔色が良くないけど…。」
「スタッフの方に、鉢の受け渡し代わって貰いすいませんでした…。」
「そんなの大丈夫だよ、手配は全部やって貰ってたから助かったよ。」
「それで、お話が……。」
「……あまり、良い話では無さそうだね。」
さすが、斉藤さん。
メンタルコーチだけあって
私が今から、何を言おうとしているかなんて
きっとこの人にはお見通しなんだろうな。
いつも飄々としているこの人も
私の様子をみて少し表情が堅くなる。
「ここ、座って?」
「はい…。」
「それで、話って?」
「あの、申し上げにくいのですが…。」
「うん。」
「明日から、私と別のスタッフがこちらの施設の管理を担当します。」
「え?」
「急で申し訳ありません…こちらの都合で、ご迷惑をお掛けして。」
「都合、ね……。」
「………。」
「勿論、我々はこの施設の管理をしてくれれば誰であろうと問題はないよ。」
「それじゃ…。」
「けど……。」
「え……?」
「メンタルコーチとして、どうして急にそんな事を言い出したのかは……気になるけどね。」
斉藤さんは少し寂しげな
優しい笑顔で私を見る。
私が何も言わなくても
この人はわかってる。
わかっているのなら
そのままそっとしておいてくればいいのに。
それに、話したところで
この状況が変わる訳じゃない。
だから、もう何も言わないで。
「………ごめんなさい。」
「……そっか、わかったよ。」
「斉藤さん……。」
「君がいてくれる事で、選手達にも良い影響が出ていただけに残念だよ……特に、越知君は。」
「……。」
「付き合っているんだろう?」
「……それも、もう終わりだから。」
「え?」
「短い間でしたが、お世話になりました…。」
「………うん、こちらこそありがとう。」
「皆さんには言わないで下さい。」
「どうしてだい?」
「優しい皆さんの言葉を聞いたら、決意が揺らぐから……特に月さんには……。」
「瑞稀さん……君は……。」
「これ、明日私がいなくなったら…月さんに渡して頂けますか。」
「手紙……?」
「よろしく、お願いします…。」
その言葉を最後に
私はロビーを後にした。
これでいい。
これで………いいんだ。