*season 9*
放課後。
私は瀬名を連れて
男子テニス部のコートまで来た。
”常勝立海”の横断幕が貼られ
選手達はそれに答えるように
練習に打ち込んでいた。
フェンス横で様子を見ていると
瀬名がある事に気付いた。
「……おかしいわね。」
「何がだ。」
「あそこ、部員の子達がドリンク運んでる。」
「それの何がおかしい。」
「男子テニス部には咲の他にもう一人女子マネがいたはずなんだけど……。」
「柳先輩、頑張ってー!」
「……あいつか。」
「ベンチに座って、応援してるだけ?」
「………この状況、瀬名はどう見る。」
「この情報だけじゃ、何も言えない。」
「…だな。」
そこにターゲットが現れる。
彼の名は真田弦一郎。
同い歳には思えない程貫禄のある男だ。
こいつが咲の男か………。
それにしても…
咲が、自分とこのマネージャーが
屋上から落ちたってのに
次の日には普通に部活だ?
そもそもこいつら
どういう神経してやがる。
「おい。」
「ん?お前は………。」
「単刀直入に聞く。」
「……何だ。」
「咲が死のうとしたのは何故だ。」
「っ!!」
「その顔、知らない訳じゃなさそうね。」
「何故、俺に……。」
「お前、咲と付き合ってんだろ。自分の女が屋上から飛び降りたってのに何も感じねーのかよ。」
「っ………。」
真田の顔色は
見る見る内に青ざめていった。
この様子だと
こいつらが関わってんのは
間違いなさそうだな。
「おい、何とか言えよ。」
「俺達の関係は……もう終わっている。」
「何だと?」
「俺はもう、咲とは……関係無いのだ。」
ガンッ
「ぐっ!!」
「関係無い、だと?」
「澪!落ち着きなさい!」
「おい、真田。」
「離せっ……。」
「テメーのとこのマネージャーが死のうとしたんだぞ……関係無い筈ねぇだろうが!!」
「澪っ!!」
「………ふん。」
真田の胸ぐらを掴んでいた手を離す。
関係無いだと?
ふざけんじゃねぇ。
毎日朝早く部活に行って
遅くまでお前らの為に働いて
どんな時でも笑顔で部活に行った。
”皆の為なら、どんな事でも頑張れる”
お前らの為にそう言った
咲の言葉を、笑顔を否定するのかよ。
「覚えておけ。」
「……。」
「咲を苦しめた奴を…奴等を、私は許さない。」
「っ……。」
「お前等が関わっているのだとしたら、お前等を纏めて叩き潰す。」
「澪……。」
「行くぞ、瀬名。これ以上こいつに関わっても時間の無駄だ。」
「……そうね。」
真田から話を聞くのは
無理そうだな。
咲はあんな男の何が良くて
付き合っていたんだ。
デカい図体の割に
確信を突かれたからなのか
情けねぇ面しやがって。
だが、これではっきりした。
今回の件には
あいつ等テニス部が関わっている。