* season 1 *






今日は主に
練習試合をするらしい。




コート毎に各学校が振り分けられていて

青学―立海
氷帝―比嘉
六角―四天宝寺
聖ルドルフ―不動峰

の組み合わせに決まった。




私は各コートを回り
ドリンクの補充や記録、怪我の手当などの
仕事を担当する事になった。


今日も忙しくなりそうだ。





「ここは、まず真田さんと越前君の試合か…。」


「よろしく、真田さん。」


「全力でかかって来い、越前。」


「あはは、試合前からバチバチだね。」


「見ててよ、先輩。」


「え、私?」


「俺、絶対勝つから。」


「…うん!頑張ってね。」


「了解っす。」


「冴水、俺がテニスの真髄を見せてやる。」


「真田さんまで…わかったから、早く試合初めて下さい。」


「う、うむ。」


「はは 、真田が言いくるめられるのも珍しいね。」


「そういえば、精市さんと真田さんは幼馴染でしたか?」


「あぁ、小さい頃同じテニススクールの同期だったんだ。」


「そっか、小さい頃から……。」




真田さんが太陽なら、精市さんは月。


真田さんはとても真っ直ぐで
皆の道を眩しい位照らしている。

逆に精市さんは
静かに皆を見守っている。
だけど必要な時には
太陽よりも明るく照らす光を放つ。



この二人は
常勝立海を象徴する存在だ。




「ずっと一緒に、同じ場所を目指して努力して来たんですね。」


「そうだね。真田とは、ここまでの人生を共にして来たと言っても過言じゃない。」


「素敵ですね、精市さんも真田さんも…。」


「ふふ、ありがとう。だけど……。」


「え?」


「俺にとっては、君と出会えた事も…とても素敵な出来事だ。」


「精市さん……。」





精市さんは
私を大切に思ってくれてる。


”嫌いにならないでくれ”
あの時の精市さんの寂しげな顔が
今でも頭に残っている。





でも……。

私は跡部君への気持ちに気付いてしまった。
精市さんの気持ちには答えられない。


それを伝えなくてはいけない。
こんなにも残酷な事があるだろうか。





「精市さん……。」


「どうしたの、そんなに切ない顔をして。」


「……。」


「花菜。」


「え……?」


「今は練習中だ、集中しよう。」


「あ……はい!」







精市さんには
きっとお見通しなんだろうな。


私の弱い部分も、全部わかってる。
この人は私よりもずっと大人だ。



こんなにも素敵な人が好きでいてくれるのに
私はその想いを返す事が出来ない。



胸が酷く痛むのを誤魔化す事が出来ない。
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