* season 1 *
その日の夜。
とても不思議な夢を見た。
亡くなった筈の
お父さんとお母さんが言うの。
”戻りなさい”
って。
戻りなさいって、どこに戻るの。
暖かい光に包まれて
その奥に吸い込まれていく様な
経験した事のない不思議な感覚だ。
「ん……朝か……。」
カーテンの隙間から差し込む光。
朝日に照らされて、目を覚ます。
ふと頬を触ると湿り気を帯びている。
知らない内に泣いていたみたい。
妙な夢ではあったけど
不思議と恐怖は感じなかった。
お母さん達が言ったあの言葉。
一体どういう意味だろう。
「夢なんだから、考えても仕方ないか……。」
今日も練習。
とりあえず朝食をとりに食堂に行こう。
今日は合宿三日目。
ちょうど折り返し地点だ。
今日も一日頑張らなくちゃ。
「どこか席空いてないかな……。」
「あ、花菜ちゃん!」
「こっち空いてるCー!」
「向日君、芥川君、おはよう。」
「花菜ちゃん、おはよ。」
「忍足君もおはよう。」
「ゆっくり休めたか?」
「うん、皆もちゃんと眠れた?」
「俺はよく寝たよー!」
「あはは、芥川君はいつもよく寝てるよね。」
「俺は、岳人のお遊びに付き合わされて寝不足や。」
「お遊び?」
「ただのトランプだよ、別に良いだろ!」
なるほど、トランプか。
向日君の事だから
侑士に勝つまでやめない!とか言って
永遠にやってたんだろうな。
忍足君は心を閉ざして
相手に気持ちを読ませないから
特にババ抜きなんかやらせたら
とんでもない事になる。
「一応聞くけど、トランプで何したの?」
「ババ抜き。」
「あちゃー……向日君、ドンマイ。」
「花菜ちゃんだけやで、俺の大変さを理解してくれんのは。」
「忍足君も、わかっていながら負けたくは無いから心を閉ざしたんでしょ。」
「そうなんだよ、花菜ちゃん!侑士ずるいだろ!?」
「ずるいと言うか何と言うか……。」
「すぅー……。」
「あれ、芥川君寝ちゃった。」
「おい!ジロー起きろよ!!」
「あははは、まったくもう。」
氷帝のこの感じ
やっぱり安心するな。
一人で絶望しか見えなかった私を
いつも優しく、傍に寄り添ってくれた皆。
今の私があるのは
紛れもない、この人達のおかげだ。
この幸せが
ずっと続けば良い、そう思う。
だけど、いつかは終わる。
その覚悟だけは、しておかないと……。