*season 8* fin
「凛ー?」
「んー?何だ、美琴か。」
「何だって何よ、一緒に帰ろうって言ったじゃん!」
「わぁーたわぁーった、あんしでけー声だすなって。」
金曜日の放課後。
凛と一緒に帰る為に教室に迎えに来た。
というか、普通男が迎えに来るんじゃないの?
ま、私が凛の事を好きだから
仕方ないんだけどね。
「あの子、また来てるの?」
「まぁな。家が近いやし、仕方ねーさ。」
「………。」
「幼馴染だっけ?凛またねー。」
「悪いな、また明日ー。」
凛は人気者で
男女関係なくいつも輪の中心にいる。
放課後、凛を迎えに行くと
凛を囲んでいる女子達に睨まれる。
きっと皆、凛が好きなんだ。
「………。」
「おい。」
「あ、何?」
「お前(ヤー)、ぬーシケた面してるんばー。」
「な、何でもないよ。凛こそ、女の子達の事邪魔されて怒ってるんじゃない?」
「はぁ?ぬー言ってんだ。」
凛は面倒くさがりで
チャラくて、適当な奴だけど
何だかんだで一緒にいてくれた。
だけど、凛の為にも
私は傍にいない方が良いと思う。
その方が凛の選択肢は増える。
幼馴染というだけで
凛を独り占めする事は
あの女の子達にとってもフェアじゃない。
「……凛。」
「あー?」
「明日からは、一緒に帰らなくて大丈夫だから。」
「あ?何でよ。」
「何でって……何でも。」
「お前、ぬー企んでるやし。」
「何も企んでないよ!ただ……。」
「ただ、何だよ。」
「これからは、凛の好きにしていいよ。」
「好きにって……。」
凛は誰かに縛られて生きる様な
小さい人間じゃないから。
自由奔放で
誰にも媚びない。
一つの場所に留まらない。
猫みたいな存在。
凛にはそういう方が合ってる。
「今まで、ありがとうね。」
「……。」
「ここまででいいよ、またね!」
「っ待てよ!」
「きゃっ……凛?」
凛が私の腕を掴む。
そして傍に引き寄せる。
バランスを崩した私は、凛の胸に支えられていた。
凛の鼓動が聞こえる…。
ち、近い……。
「美琴。」
「な、何……?」
「俺(わん)から離れようなんて、考えんなよ。」
「えっ……?」
「お前は、俺がいねーとだめだろ。」
「な、何それ!そんな事、ないもん!」
「……ゆくしよ。」
「え……?」
「俺が、お前がいねーとダメなんばーよ。」
「そんな事ないでしょっ……は、離してよ。」
「だーめ。離したらお前逃げんだろ。」
「っ………。」
せっかく
自由にさせてあげようと思ったのに
どうしてこんな事するの。
私が傍にいたって
凛はただただ、不自由なだけなのに。