*season 7* fin

―越知side―


「凛花、あまり前髪を上げないでくれ。」


「え?何で?」


「何でもだ。」


「ふーん、まぁいいけど。そういえばさ、今日お祭り楽しみだね!何から見ようか?」


「……その事なんだが、今日はお前と行動する事が出来ない。」


「え?何で?」




月と付き合っている事を
凛花に伝えて良いのだろうか。



しかし、伝えねば
凛花の誘いを断る口実がない。

今後の事を考えると
伝えた方がメリットがあるだろう。




「……月と、露店を回る。」


「月って、瑞稀さんの事?」


「あぁ、月は俺の彼女だ。」


「!!」


「黙っていてすまなかった。」


「へ、へーっ……そうなんだ。」


「何だ、その顔は。」






気のせいだろうか。

凛花の顔が微かに曇った気がしたが……。




凛花は幼い頃から何をするにも一緒で
隣にいるのが当然の存在だった。


いつも太陽の様に明るく
誰にでも公平に接する事の出来る奴だ。

身長が原因で怖がられていた時も
凛花が一番に間に入ってくれた。



俺にとって凛花は
”親友”と呼べる存在だ。




今の俺があるのは
間違いなく、彼女のおかげだ。






「……月光は、瑞稀さんのどこが好きなの?」


「どこと言われれば……全てだろうか。」


「何それ、もっと具体的に!」


「具体的……。」





月は
俺の目を綺麗だと、言った。


皆が恐れた俺の目を
綺麗だと、隠すのは勿体ないと。
そう言った彼女の笑顔に惚れた。


愛らしく笑う彼女は
俺には眩しい程、輝いていて
あいつの傍にいたいと自然と思う。




それとは裏腹に
月は壮絶な過去を過ごして来た。


あいつが涙を流さずに済む様に
俺が守ってやりたい。
他の誰でもない、俺が守りたいんだ。





「そうだな……あり過ぎて、言葉には出来ん。」


「……そっか、本当に好きなんだね。」


「あぁ。」


「………出来たよ、あっちに瑞稀さんいたから行ってあげなよ。」


「直前に断りを入れて、すまなかった。」


「いいよ、楽しんで来て。」


「礼を言う。」


「………うん。」









月の浴衣、か……。






上手く理性を保てるといいが……。








あいつの傍にいると
触れたくて仕方がなくなる。
分かっていても、抑えが効かない。




俺は月が欲しくて堪らない。
彼女の心も、唇も、体も…全て俺のものにしたい。
44/66ページ