*season 7* fin
「そもそも、名前も名乗らないあなたに言われる筋合いはありません。」
「………ふん、生意気な口聞くじゃねぇか。」
「お互い様だと思いますが。」
「まぁいい……俺は平等院 鳳凰だ。」
「……凄い名前。」
「貴様の言う事も一理ある。自ら精神を律する事が出来なければそれまでだからな。」
「……平等院さんも、日本を背負ってるんですね。」
「俺は日本のテニスを世界の頂点に導く、どんな手を使ってもだ。」
覚悟だ。
この人の瞳からは覚悟を感じる。
”俺は日本のテニスを世界の頂点に導く”
それがこの人の夢なんだ。
だから私に対しても強い言葉をかけた。
世界を獲る、これは彼の成すべき事だから。
この人の言葉は、迷ってばかりの私の心に
鋭いナイフの様に突き刺さった。
「きっと皆さんなら、世界を獲れます。」
「その根拠は何だ。」
「……平等院さんが先頭にいる日本代表チームは、きっと負けないと思います。」
「……。」
「勘ですけど、あなたがキャプテンですよね?だから負けないと思います。」
「……変な女だ。」
「それもお互い様です。」
「俺に言い返した女は貴様が初めてだ。」
「顔怖いですもんね。」
「あぁ?」
「何でもないです。」
「ふん、まぁいい。俺は行く。」
そう言うと
平等院さんは歩いて行った。
腹が立ってあんな事言っちゃったけど
私、やっぱり越知さんの邪魔してるのかな…。
自信が無い。
何においても私は空っぽだ。
結局自分に何の確信も持てない。
「………。」
「ん?瑞稀か。」
「鬼さん、お疲れ様です。」
「お前もブースの下見か?」
「あ、はい……。」
「………。」
「鬼さん?どうかしっ……ひゃっ!」
鬼さんは私の頭を
クシャクシャに撫でた。
見上げると
険しい顔で私を見ている鬼さん。
私また何かしちゃったのかな……。
「お、鬼さんっ?」
「今度は誰に何を言われたんだ?」
「え?」
「お前らはわかりやすいからな。」
「鬼さん……。」
「…お前は妹みたいなもんだからよ、元気がねぇと心配になんだろうが。」
「鬼さんっ……大好きっ!」
「うぉっ!くっつくな!」
鬼さんは本当に優しいな。
いつも皆の事を
こうやって見ているんだろうな。
練習とか覗くと、中学生達に対しても
厳しく怒鳴っている鬼さんを見るけど
きっとあの子達が世界と渡り合えるように
あえて厳しく接してるんだと思う。
お兄ちゃんみたいなお父さんみたいな
鬼さんは唯一無二の安心する存在。