*season 7* fin
「本当に、我儘な子供みたい……。」
凛花さんは
私達が付き合ってる事を知らない。
だからああやって言うのは
当たり前の事だと思う。
凛花さんは私より越知さんを知ってる。
長い時間を過ごしてるんだから。
越知さんにとっても
彼女は大切な存在なんだと思う。
あの優しい笑顔がそれを物語っている。
せっかく誘ってくれたのに
私、酷い態度だったよね……。
「……。」
「瑞稀か?」
「あ、徳川さん…。」
「こんな所で何をしている。」
「いえ、何も……。」
「……越知さんはどうした。」
「え?」
「君がそういう顔をしている時は、大抵越知さんと何かあった時だろう。」
「そんなに酷い顔してます?」
「世界が終わるかの様な顔をしている。」
「え……。」
「嘘だ。」
「……あははっ、徳川さんて冗談とか言うんですね。」
「人並みにはな。」
徳川さんは優しく笑う。
きっと私を励ます為に
言ってくれたんだろうな。
徳川さんにまで
気を遣わせて何やってるんだろう。
「あれ?徳川さん、その包帯……。」
「ん?これか。」
「怪我したんですか?」
「大した事は無い、昨日の試合で少しな。」
「少しって……。」
「……死ぬ程、倒したい奴だった。」
「え……。」
” 死ぬ程倒したい ”
そう言った徳川さんの瞳は
凄く遠くを見て、一切曇がない。
徳川さんにそこまで思わせる人って
一体どんな人なんだろう。
「だが、そいつは死ぬ程倒したい奴ではなかった。」
「え?」
「俺はあいつを倒し、世界に勝つ。それが俺の目指すべき場所だ。」
「……何か、かっこいいですね。」
「ん?」
「徳川さんも皆さんも、夢があって…そこに向かって努力してて……。」
「お前は、何か夢があるのか?」
「夢……。」
夢か……。
中学を卒業して
そのままおばあちゃんのお店を継いだ。
お母さんは高校に行きなさいって
言ってくれたんだけど、怖かった。
また同じ事が起こるんじゃないかって。
おばあちゃんのお店を継いで
何となくここまで来たけど
私の本当にやりたい事って何だろう。
花はもちろん好き。
植物に関わっていたいと思う。
ただ、ここに来て皆に出会って
私が知らなかった世界を知った。
皆と関わる事で
色々な選択肢が増えたのは確かだ。
私は何をしたい?何が出来る?
漠然と思うのは
”幸せになりたい”って事。
「……まだ、わかりません。」
「そうか、焦る事はないさ。」
「徳川さん……。」
「俺達は何でも出来る、何にでもなれる。そうだろ?」
「……私達、ここからですよね。」
「その通りだ。」
「私、夢なんて考えた事なんて無かったから……。」
「お前だけじゃないさ。」
「徳川さん、ありがとう。」
「少し、元気になったようだな。」
「夢が見つかったら、徳川さんに一番に伝えに行きますね!」
「あぁ、楽しみにしている。」
これから先の事。
少し考えてみようかな。