*season 7* fin
「瑞稀。」
「越知、さん?」
「おや、ナイスタイミングですね。」
「君島……。」
「越知君、ここからは君の役目です。」
「君島さん、ありがとうございました。」
「お気になさらず。」
君島さんは室内に戻って行った。
過去に囚われる必要は無い…か。
本当にそうだよね。
頭では
ちゃんとわかってる。
「……。」
「……何かあったのか。」
「え…?」
「先程、様子がおかしかっただろう。」
「いえ……越知さんこそ、ロビーで不機嫌そうでしたけど何かあったんですか?」
「………。」
越知さんは私の隣に腰掛ける。
少しの沈黙が続く。
越知さんの瞳は遠くを見つめている。
彼とこうしているのは嫌いじゃない。
時間が止まったような、不思議な感覚。
けたたましく、蝉の鳴き声はするのに
この空気感はとても不思議だ。
「………遠野に触れている姿を見て、苛立ちを覚えた。」
「え……?」
「俺以外の男に触れるな、そう思った。」
「越知さん……。」
「嫉妬、とでも言うのだろうか。」
「……。」
「不快な思いをさせてすまなかった。」
越知さんも
私と同じ気持ちだったんだ。
私が凛花さんに触らないでって
そう思った気持ちと同じ。
私の方が先に越知さんを傷付けてた。
もちろん、悪意はない。
ただ単純に遠野さんの髪が綺麗で
触りたいと思った、本当にそれだけ。
でも、今思えば軽率な行動だ。
「……ごめんなさい。」
「瑞稀…。」
「越知さんを傷付けてるなんて思っても見なくて…。」
「……。」
「私も、越知さんに彼女が触れてるのが……凄く嫌でした。」
「……凛花の事か?」
「私の越知さんに触らないでって、凄く悲しくなりました。」
「……知らぬ間に、お前の事を傷付けていたのだな。」
「っ……。」
「泣かないでくれ、俺はお前の笑顔が見たい。」
涙が頬を蔦う。
もう何の涙なのかさえわからない。
安堵、哀情、愉悦…様々な感情が交差する。
その涙を追い掛けるように
越知さんは頬にキスを落とす。
やがてそれは
唇へと移っていった。
最初は触れるだけのキス。
徐々に深みを増していく。
越知さんは私を抱き寄せて
欲のままに唇を重ねる。
荒くなる息遣いが
私達を艷麗な世界へと引き込む。