*season 7* fin
次の日。
私は朝食で白石君達に
花の相談をしていた。
今日の正午までに
発注を掛けないと間に合わない。
急がなくちゃ。
「……という事なんだけど、どう思う?」
「そやなぁ、全部可愛良ぇから迷うな。」
「ルリマツリとエボルブルスは凄く爽やかな色ですね。」
「ダリアとジニアも華やかで良いね。」
「どれも捨て難くて、決まらないんだよね。」
「二種類はあかんの?」
「全部で二百用意すれば良いから、二、三種類なら問題無いと思う。」
「なら、暖色系、寒色系から一つずつ選べば良いと思います。」
「俺も不二の意見に賛成です。選べるのは嬉しいですよね。」
白石君達に相談して正解だったな。
どんどん決まっていく。
彼等の決断力は
やはりテニスを通して
培われているのだろうか。
考えるその横顔は
どこか大人びて見える。
「じゃあ、二種類選ぶとしたら何が良い?」
「僕はダリアとルリマツリが良いな。」
「俺も不二君と同じや。」
「僕はジニアとルリマツリが良いかな。」
「なるほど、ルリマツリは決定だね。」
「月ちゃんはどれが良ぇんや?」
「だーかーら、決められないから皆に聞いたんだよ?」
「ふふ、瑞稀さんらしいや。」
「皆ありがとう、これで仕事が進むよ。」
「また何かあったら呼んで下さい。」
「うん、ありがとう。」
多数だった
ルリマツリとダリアにしよう。
よし!
花の種類も決まったし
発注先に連絡しなくちゃ!
それにしても
夏祭り、か………。
小さい頃。
本当に小さい頃。
お父さんとお母さんと
夏祭りに行った。
左手はお父さん、右手はお母さん。
どこに行くにも手を繋いでた。
綿飴買って
三人で分けて、手がベタベタになって。
泣いてるとお父さんが肩車してくれて。
懐かしい記憶が甦る。
「はい。では、それでよろしくお願い致します。」
ピッ
「ふぅ……これでよし。」
「よぅ、猫娘。」
「あ、遠野さんお疲れ様です。」
「暇そうだなぁ、お前。」
「もう、私だって仕事中なんですからね?」
「ひゃーはっは!仕事ねぇ。」
「遠野さんこそ、どうされたんですか?」
そこに現れたのは
遠野さん。
前から思ってたけど
遠野さんて髪サラサラだよね。
どんなケアしてるんだろう。
触らせて下さいって言ったら
怒られるかな……。
「明日の祭り準備で練習は午前で終わりなんだよ。」
「………。」
「おい、なに人の顔をジロジロ見てやがる。処刑されてぇのかぁ?」
「あっ、ごめんなさい!その、遠野さんの髪って凄く綺麗ですよね。」
「あぁ?」
「ちょっとだけ、触っても良いですか?」
「なっ………。」
「………だめ、ですか?」
「っ…………さ、さっさとしろっ。」
えっ………!?
いいの!?
絶対ダメって言われると思ったから
ちょっとびっくりした……。
遠野さんは私の隣に腰掛ける。
遠野さんて
いつも処刑処刑って言って
あまり人が寄り付く雰囲気じゃ無いけど
本当はただ不器用で、優しい人だと思う。
あの時も私の為に怒ってくれた。
それは多分、弱者の私を力づくで…
フェアじゃない状態だったから
遠野さんは頭にきたんだと思う。
「じゃあ、失礼します…。」
「………。」
「わっ……やっぱり、サラサラだぁ!」
「そんなキラキラした目で見んじゃねぇっ……。」
「だって、凄く綺麗だから……。」
「ば、馬鹿が!男に向かって綺麗とか言うんじゃねぇ!」
「遠野さん、照れてる……可愛いです。」
「お前なぁっ……。」
「明日のお祭り、皆さんは浴衣とか着ないんですか?」
「あ?着る予定だ、それが何だよ。」
「じゃあ、髪結いましょう!?」
「はぁ!?何でだよ!」
「絶対に似合いますから!ね!?」
「くっ……てめぇ、そんな目で見んじゃねぇっ!」
遠野さん、顔真っ赤だ……。
ふふっ。
可愛いところあるじゃない。