*season 7* fin
「待ってっ……んっ……はっ……。」
「待たない。」
潤んだ彼の瞳は
想像以上に婀娜やかで
それだけで胸の高鳴りが止まらない。
やがて
首筋へとキスを落とす。
舌がねっとりと這う感覚に身をよじる。
この先はもう、キス以上の事になる。
期待と不安が入り交じって、涙が零れる。
「っ……。」
「瑞稀……?」
「ごめんっ……なさっ……。」
「……すまない、怖がらせたな。」
「嫌とかじゃなくて…こういうの初めてで、どうしていいかわからなくてっ……。」
「無理をするな、今のは俺が悪かった。」
「ごめんなさいっ……。」
越知さんの気持ちが嬉しい反面
漠然とした不安に襲われる。
求められても
どうしたらいいのかわからない。
ただ、越知さんに縋る事しか出来なくて
こんな自分を情けないと思う。
私が一人思い悩んでるのを察したのか
越知さんはその大きな手で頭を撫でた。
不思議な安心感に包まれて、自然と涙も止まる。
「謝るな、段々慣れればいい。」
「越知さん……。」
「今は、キスで我慢する。」
「えっ……んんっ...……ゃっ……ぁんっ……。」
コンコン
「あっ……。」
「月ちゃーん!おるー?」
「毛利さん……?」
「ほおっておけ。」
「でもっ……んっ……おっ……ちさっ……。」
「今は、俺のものだ。」
「んぁっ……ぁっ……ふぅっ……。」
越知さんのキスは
激しさを増す。
押し倒された私は
彼とベットに挟まれて
押し返してもビクともしない。
この世界には
私と越知さんしかいない。
そう錯覚する程に彼を近くに感じる。
「月ちゃん、おらへんのー?」
「はぁっ……んっ……だっ……めぇっ……。」
「瑞稀……好きだっ……。」
「月ちゃん、開けるでー?」
「えっ!?」
ガチャ
「月ちゃー……………あ。」
「も、毛利さっ…………。」
「…………………………。」
「す、すんません!邪魔するつもりじゃっ……。」
「毛利、他人の部屋に勝手に入るのは褒められた事ではないぞ。」
「つ、月さん、顔怖……。」
「うぅ、恥かしい……。」
毛利さんと私は
違う意味で項垂れていた。
あんなとこ見られたら
気まず過ぎて毛利さんの顔見れないよ…。
キスされてる時は
恥ずかしくてドキドキして
離してって思うのに、いざ離れると
越知さんの唇が恋しくなる。
もっとしてと思ってしまう私は
どうかしてるのだろうか。
「それで、瑞稀に何の用だ。」
「そうやった!コーチが祭用の植木鉢の大体の予算が知りたいから、明日教えてくれって言っとったで!」
「は、はい、わかりました。」
「月ちゃん、邪魔してすまへんかった。」
「い、いえっ……あのっ……。」
「瑞稀、今日は部屋に戻る。」
「はい…。」
「毛利、行くぞ。」
「は、はい!月ちゃん、おやすみ!」
「おやすみなさい。」
「………月。」
「えっ………?」
「ゆっくり休め。」
「は、はい……おやすみなさい。」
初めて
越知さんに名前を呼ばれた。
ただ名前を呼ばれただけなのに
こんなに嬉しくて、彼を愛おしく思う。
私も月さんて
呼んでもいいのかな……。