*season 7* fin


―越知side―






あの日以来
俺は瑞稀の目を見れないでいる。




何故か?

あいつを怖がらせたくないからだ。





あの日の夜
俺に ”見ないで” と言った。


やはり、瑞稀もこの目が怖かったのだ。
それを気付いてやれなかった。
あいつの言葉を鵜呑みにして。




だが、さして問題は無い。

瑞稀と出会う前の環境に戻るだけだ。
俺には、何の問題もない。




なのに、あいつの悲しげな
涙の潤む顔が頭に浮かぶのは、何故だ。





あいつの顔を見ると
何故か、胸が締め付けられる。
その理由が俺には皆目見当もつかない。





「おいおい、お前さんらしくねーな。どうしたんだし。」


「む……。」


「月さん、どないしたん?さっきからミス多いっすわ。」


「……。」


「ツッキー、少し休憩しよか。」


「……すまない。」





心ここに在らず
と言ったところだろうか。




練習に支障を来す程に
俺は、あいつの事を考えてしまっている。


どこかで涙を流していないだろうか。
怖い思いをしていないだろうか。

傍にいてやれたなら
この思いも杞憂に終わるだろう。





「珍しいな、越知。」


「……鬼か。」


「お前が立て続けに、ネットに引っ掛けるなんてな。」


「…言い返す言葉も無い。」


「瑞稀の事か。」


「……。」


「んな事だろーと思ったぜ。最近のお前は、あからさまにあいつの事を避けてるみてーだったからな。」


「お前には、わかっていたのだな。」


「最近あいつの元気が無いと思ったら、やはり原因はお前か。」


「……瑞稀が、どうかしたのか。」


「見ててわかんねーのかよ。今までお前が一番近くにいたんだろーが。」






俺が傍にいた……。



そうだ。
瑞稀の一番近くにいてやりたかった。
何故だかはわからない。




初めて会った時は
さして興味は無かった。




だが、あの草むらから
小さな彼女が顔を出した時
不思議と小動物の様な愛らしさが
俺の心の中を満たしていった。



今思えば、もうあの時には
始まっていたのかもしれんな…。






「………。」


「あいつは、お前の魂(ハート)に火をつけちまったみたいだな。」


「魂………か。」


「行ってこいよ、今の状態じゃろくに練習にもならんだろう。」


「……礼を言う。」





タタッ





「ったく、世話の掛かる奴らだ。」






あいつに拒絶される事が怖かった。



拒絶される前に
離れて行ってしまう前に
自分から引き下がる方がいい。


そう思っていたが
俺の浅慮な思い込みが瑞稀を
あいつを苦しめていたのか。







今、俺はどうしようも無く
あいつに触れたい。





これは、重症……だな。
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