* season 1 *
落ちると思った。
あの時みたいに。
あの時は別に怖くなかった。
何の未練も無かったから。
早くお父さんとお母さんに会いたかった。
今だって
二人に会いたいのは変わらない。
だけど
本能的に”怖い”って思った。
日吉君が助けてくれなかったら
今度こそ本当に……。
どうしよう…。
震えが止まらないよ……。
「っ……ごめっ……。」
「…大丈夫ですか。」
「んっ…大丈夫っ……。」
「まだ、震えてる。」
「ご、ごめっ……。」
「先輩は……。」
「え…?」
「何を背負ってるんですか。」
「!」
まっすぐ澄んだ瞳で
私を捕らえる日吉君。
私の脆い部分を見透かされそうな
真っ直ぐな視線に私は目をそらす。
知られたくない。
自分がこんな人間だって。
触れられたくない。
「先輩?」
「…何も背負ってなんかないよ。 」
「……。」
「助けてくれてありがとう、もう…大丈夫だから。」
「……じゃあ、戻ります。」
「また、部活でね。」
「この屋上、いつもは鍵かかって入れなくなってるんです。危ないからもう入らないで下さいね。」
そう言って日吉君は
納得いかないような表情で
屋上を後にした。
それにしても
日吉君はどうして屋上にいたんだろ。
普段立ち入り禁止なら
どうしてこんな所に?