*season 7* fin
「……わかりました。あなたがそれで良いなら、私達は何も言いません。」
「……。」
「但し、私達もこのまま彼を許す気はありません。警察には通報しませんが、それ相応の償いはして頂きます。」
「…その後の事は、お任せします。」
「猫娘。」
「遠野さん…?」
「あの野郎とお前は、どういう関係だ。」
「え……。」
「遠野君、今は……。」
「いえ、こんなにご迷惑をお掛けして…皆さんには聞く権利があります。」
本当は思い出したくない。
だけど、ここまで大事になって
色々な人達に迷惑をかけた。
この人達には知る権利がある。
息が詰まる。
上手く呼吸が出来ない。
室内は空調がかかって涼しいのに
拒絶反応なのか、汗が滴る。
小刻みに震える手。
すると、越知さんが私の手を握る。
何も言わないけど ”大丈夫” って言ってるような
そんな安心感に包まれる。
「……彼は、中学の時の同級生です。」
「君は十六歳、という事ですか。」
「十六歳……高校には行かずに、仕事をしているのか。」
「私、虐められてたんです。」
「虐めだぁ?お前がかよ。」
「きっかけは父が自殺した事でした。会社のお金を横領したとか、根も葉もない噂話が広がって…私は虐めの標的になった。」
「瑞稀……。」
「その虐めグループの中心人物の一人が……。」
「あの、クソガキだった訳か。」
鮮明に蘇る記憶。
惨憺たる記憶と共に
涙が溢れ出す。
私の手を握る越知さんの力が
強くなるのを感じた。
「それでも、私だけなら耐えられたっ……。」
「どういう、意味ですか。」
「あの人達はっ…おばあちゃんの大事にしてたお花までっ……壊したんですっ!」
「……。」
「おばあちゃんのお店に並んでた植木鉢を、端からっ……。」
「……ちっ、胸糞悪ぃぜ。」
「おばあちゃんにあんな悲しそうな顔っ……させたくなかったのに……。」
「瑞希さん……。」
「大切な人を悲しませるなら、学校なんて行く必要ない……だから私は、母と一緒におばあちゃんのお店を継いだんです。」
初めて自分の過去を他人に話した。
溜めていたものを
吐き切ったからだろうか
異常な程に心は長閑やかだ。
溢れていた涙も止まる。
本当は誰かに聞いて欲しかった。
誰でも良いから、拠り所になってほしかった。