*season 7* fin


「お願いっ、やめてっ!」


「うるせーな………ふんっ!」


「きゃあっ!」


「何かこの感じ、前にもあったな。」


「加藤、それはやりすぎなんじゃね?」


「うっ……ぁっ……やめっ……。」





足を退けようとした私の手を
加藤君は容赦なく踏みつけた。
あの時と同じように、なんの躊躇いもなく。





激しい痛みと共に
生暖かい何かを感じる。
踏まれている手が、みるみる内に
自身の血液によって赤く染っていく。





「もうっ……やめてっ……お願いっ……。」


「………そうだ。」


「え……?」


「あの時の続き、しようぜ。」


「あの、時……?」






加藤君は薄ら笑いを浮かべて
私を押し倒した。




”あの時”の意味を
私はすぐに理解した。





恐怖で、上手く息を吸えない。
抵抗しなくちゃなのに…体が動かない。
頭が真っ白で、何も考えられない。




ただ涙を流す事しか出来ない。
なんて私は無力なんだろう。
あの時と何も変わっていない。






「あの時は邪魔されたけど、今回こそ楽しもうぜ?」


「俺も混ぜてー!」


「はっ……ぁっ……う……やめっ……。」


「その顔、堪んねー。」







ドスッ






「ぐぁっ!」


「か、加藤っ!?」







あれは……

テニスボール………?







「処刑法其の五、コロンビア・ネクタイ。」


「ぐっ……て、てめぇっ……。」


「と……おの……さ………。」


「おい、クソガキ。てめぇ、誰の玩具に手ぇ出してんだ。あぁ!?」


「や、やべぇよっ、加藤!」


「瑞稀さん、大丈夫……ではなさそうですね。」


「きみ……じ……ま……さっ……。」


「怖かったでしょう……もう、大丈夫です。」







遠野さんと君島さんが
助けてくれた……?




踏みつけられた手の痛みと
恐怖心、安堵感。



頭の中がごちゃごちゃ過ぎて
この状況を把握出来ない。



何も考えられないなのに、涙は溢れる。







「ふぇっ……。」


「……おい、クソ共。お前ら、このまま無事に帰れると思ってねーよなぁ!?」


「くそっ!!だったら何だよ!!」


「加藤っ!まじでやべぇって!」


「ここは日本テニス協会の手のかかっている施設。すいませんでしたで終わる程、甘い場所じゃない。」


「っ……。」


「君島、こいつらの事は俺に任せろ。お前はそいつを医務室に運べ。」


「わかりました。但し、やりすぎは禁物ですよ。」


「うるせー、このままじゃ俺の腹の虫が収まんねーんだよっ!」


「……まぁ、同感ですが。とりあえず、彼女を医務室に連れていきます。」






君島さんに抱かれ
そのまま、私は意識を手放した。
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