*season 7* fin







遠野さんの話を聞いてから
食欲もわかず、結局朝食も摂れなかった。


体調も良くなかったから
休ませてもらおうと思ったけど
仕事を請け負っている身としてそれは出来ない。






「考え、過ぎだよね……そもそも今日だって、本当にいるかわからないんだから。」




今作業している所は
今朝スタッフの人が規制線を張った場所の
更に奥にある共有スペースの花壇。


いくつかの場所に貼られた規制線は
城聖高校の生徒が入らない様に付けたものらしい。



ここには、部外者は入れない。
今日はここで花の手入れをする事にした。




「こんな時でも、花は綺麗で…本当に癒される。」







忘れもしない、あの日の事。





中学三年の夏。
環境美化委員だった私は
毎日、学校の花壇の手入れを行っていた。



ある日の放課後。
私はいつもの様に裏庭の花壇の整備をしてた。
そこに通りかかったのが、加藤 颯馬。
何人かクラスメイトを引き連れて現れた。



土いじりなんてダサいとか
色々な言葉で罵倒されたけど
私は全て聞き流し、無視した。


それが彼を苛立たせたのか
加藤君は花壇の花を踏みつけ
花を心配して寄り添わせた私の手まで
彼は笑いながら踏みつけた。





その後、私の体を組み伏せて
制服に手を掛け、無理やり脱がそうとした。


もうダメだと思った時
たまたま通りかかった教師が気付いて
止めに入った事で、事なきを得た。






思い出すだけで
呼吸が上手く出来なくなる。

吸って吐く、ただそれだけの
単純な作業が出来なくなる程に
その記憶は私にとって忌々しいものだ。







「仕事、しなきゃ……。」


「しかし、広い施設だよなー。」


「こっちは共有スペースか?」


「っ!?」


「ん?誰かいるぞ。」


「女?」


「ど……どう、して……。」






ここにいるはずがない。


なのにどうして…………?

ここは規制線が貼られていて
施設の関係者以外入れないはすなのに……。



どうして
あなたが………。



加藤君がいるの……?






「お前、どこかで………。」


「あっ………。」


「……瑞稀か?」


「加藤、知り合いかよ。」


「あぁ、中学の時のクラスメイト。」


「へー、可愛いじゃん!」


「中学卒業と共に見なくなったと思ったら、こんなとこで何してんだよ。」


「っ……。」


「せっかく会えたんだしさ、少し話でもしようや。」





グシャッ





「や、やめてっ!!」


「お前、まだ土いじりやってんのかよ。相変わらずダセェな。」


「足を退けてっ!!」


「あははっ!どーすっかなぁ!」


「加藤、お前も相変わらずひでー奴だな!」






加藤君は
花壇に植えられていた花を
何の迷いも無く踏みつけた。


あの時と同じ、冷酷な笑顔で。
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