*season 7* fin
次の日の朝。
少し早く目を覚ました私は
散歩をしながら花壇の様子を見て回っていた。
暑くなる前に水くれを終わらせないと
花が枯れる原因にも繋がる。
それに、早朝の作業は涼しく
作業効率も上がるから一石二鳥。
「うん、今日も可愛い。」
「そこにも規制線張って。」
「こっちはどうしますか?」
「スタッフの人達、こんな朝早くから何してるんだろ……。」
メインコートの周りを
スタッフの人達が慌ただしく走り回る。
コート脇の通路に規制線を張ったり
観覧席にドリンクなどの用意など
忙しなく動き回っている。
今日イベントか何かあるのかな?
「よぉ、猫娘。」
「あ、遠野さん。おはようございます。」
「お前、こんな朝っぱらから何やってんだぁ?」
「花壇の水やりです。」
「水やりだぁ?呑気なもんだなぁ!」
「そういう遠野さんこそ、こんな時間にどうしたんですか?」
「あぁ?自主練してたんだよ。」
「自主練……遠野さんて、見た目によらず真面目なんですね。」
「お前、調子乗ってると処刑しちゃうよ?」
「ふふっ、冗談ですよ。」
「たくよぉ……そういや、お前知ってるか。」
「え?」
「今日、何とかっつー高校の奴らが見学に来るらしいぜー?」
「見学?」
「俺達も昨日の夜のミーティングで聞かされたから、よくは知らねーけどな。」
なるほど。
それがあるから
スタッフの人達が色々準備してるんだ。
朝早くから忙しくて大変だ。
昨日、越知さんが遅れたのも
その件の通達事項が色々あったんだろうな。
迷惑にならない様に今日は必要な時以外
メインコートには近づかないようにしよう。
「この近くの高校なんですか?」
「らしいぜ?じょう……城聖高校だったか?」
「………え?」
「確かそんな名前だったな。」
「城聖、高校……?」
「だから、そうだって言ってんだろーが。」
確か、その高校は
中学の時に私を虐めていた主犯格の男子が
スポーツ推薦で入学してたはず。
名前は加藤 颯馬(かとう そうま)。
彼はテニス部に所属してた。
スポーツ推薦で合格したのを
クラスで自慢していたからよく覚えている。
一見、人当たりが良くて
誰とでも仲良くなれるタイプだけど
それとは裏腹に、性格は傲慢で
自分の気に入らない人間に対しては酷く冷酷だ。
それは、女の私に対しても変わらなかった。
「………。」
「ん?猫娘、どうかしたのかよ。」
「い、いえ……。」
「……お前、顔色悪ぃぞ。」
「大丈夫、ですっ……失礼しますっ!」
「あ、おい!猫娘!」
込み上げてくる強烈な吐き気。
鈍器で頭部を殴られたような衝撃と
立って居られない位の酷い目眩に襲われる。
これは一種のトラウマだ。
もう関係ないと分かっていても
冷徹で、苛酷なあの頃の記憶が蘇る。
克服したつもりだった。
だけど、受け止められない事実を
思い出さない様に心に蓋をしていただけだった。
怖い、思い出したくない。
その感情が心を埋め尽くす。