*season 6* fin

―真田side―


「赤也、もう少し体力をつけろ。あれでは青学の奴らにはついていけんぞ。」


「へいへい、何でお……。」


「何で俺ばっかりと、お前は言う。」


「……もう、この先輩達やだ。」


「ん?おい、真田……。」


「仁王、何だ。」


「あれは……羽月か?」




あれは…
保健医と茉夏と……羽月?



羽月は茉夏に支えられて
車に乗ろうとしている。


貧血と言っていたが
そんなに具合が悪かったのか?




「真田、何か知っているか。」


「いや、貧血だから保健室に行くと聞いただけだが…。」


「ふむ……。」


「どうした、柳。」


「貧血………。」


「どうしたんですか、柳君。」


「…弦一郎、本当に貧血なのか?」


「どういう意味だ。」




柳は何やら考え込んでいる。


確かに
茉夏に支えられた羽月は
辛そうに泣いていた。





泣いていた……?




「む……。」


「真田、何か思い当たる事があるのか。」


「いや………あとで、茉夏に聞いておく。」





羽月を乗せた車は学校を後にした。


それを見ていた俺達に気付いたのか
茉夏は走って俺たちの所に。



茉夏は、どこか不安そうな顔をしている。





「弦一郎、皆!」


「茉夏、羽月を任せて悪かったな。」


「それは、いいんだけど……。」


「茉夏先輩、花梨ってそんなに具合悪かったんすか?」


「それなんだけど………。」


「どうした。」


「どうしたんじゃ、茉夏。らしくないの。」


「……花梨ちゃんね、左肩の辺りに酷い痣ができていて、それが痛かったみたいなの。」


「痣?あいつ、貧血だったんだろぃ?」


「それは、花梨ちゃんが皆には言わないでって言うから私が咄嗟に着いた嘘よ。」


「何だと……?」


「折れてはいなそうだけど、あれ……凄く痛かったと思う。」





左肩に痣?

昨日一緒に帰った時は
そんな様子は微塵もなかった。



という事は
俺と別れた後、家で……?




いや、それなら
親が病院につれていくだろう。






という事は………。





「花梨ちゃん、いつも私達より朝早く来て準備してるのを知ってる?」


「何だと?」


「あの子、自分が皆の事足引っ張ってると思ってて…朝早く来てコートの整備とかドリンクの用意とか、色々な事先回りしてやってくれてるの。」


「確かに、私達が来る頃には全て用意が整っていましたが…。」


「まさか、花梨が一人でやってたんすか!?」


「皆には秘密にしてって、言われてたんだけど……もしかすると、その時に何かあったんじゃないかな。」


「………。」


「弦一郎、どうする。」


「そうだな、俺が後で……。」


「それはダメ!」


「何故だ、茉夏。」


「花梨ちゃん、この事皆には絶対に言わないでって言ってた。私も何があったかは教えて貰えなかったけど、彼女なりに何か思う所があるんだと思う。」


「……。」


「だから、花梨ちゃんが話すまで待ってあげて欲しいんだ。」


「………わかった。俺達は気付かないふりをして、羽月のフォローをしよう。」


「そうじゃな。」






羽月は
いつも忙しなくバタバタ動き回り
落ち着きがない。


俺が注意しても
”怒る先輩は大嫌い”と言ってすぐに逃げる。


生意気で小動物みたいな
そんな奴だ。





だが、あいつは
誰に対しても弱音を吐いたことは無い。


ミスをしても
怒られても
何をしていても
いつも笑顔で明るく振舞っている。






俺はあいつが悩んでいるのを
気づいてやれなかったのか。
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