*season 5* fin
「それ、捨てちまうのか?」
「えっ……。」
「なら、俺にくんない?」
「えっ……でも……。」
「捨てるなら、俺が食ってもいいだろぃ?」
「……どうぞ。」
「サンキュー!」
そういって
私の持っていた包みを広げ
トリュフを口に含む。
口に含んだ途端
驚いた表情に変わる。
そしてすぐに笑顔で……。
「うめぇ!お前、こんな美味いもん作れるのか!凄いじゃねーか!」
「あ、ありがとう…ございます。」
「こんな美味いもん食えないなんて、そいつ馬鹿見たな。」
「……っ……ふぇっ……。」
「ん、我慢せず泣けよ。」
名前も知らない。
初めて会ったその人に
私は、私の心は救われた。
本当はあの人に渡す筈だった
ホワイトチョコレートのトリュフ。
一ヶ月も前から準備した
あの人へのプレゼント。
叶う事はなかったけど
私の頑張った気持ちは……。
「……無駄にならなかった。」
「千早?」
「えっ………?」
「俺といるのに、何余所見してんだよ。」
「……先輩と、初めて会った日の事を思い出してました。」
「うん?」
「あ、そうだ……これ……。」
「ん?何だよ。」
「その……マフィン…焼いたので……。」
「マジ!?」
私のお菓子一つで
こんなに喜んでくれる。
先輩はもう
私にとって特別な人。
でも、言わない。
また同じ結果になりそうで
怖いから…….。