*聖女の加護*
日が沈みかけた頃
ベルベット達は帰ってきた。
皆傷だらけで
でも、私には皆を手当する事しか出来なくて。
「アイゼン、傷の手当を……。」
「必要ない。この程度の傷、自分で治せる。」
「……そっか、そうだね。」
「つれないのぅ、アイゼン。」
「まぁ、自分で治せるのは確かだしなぁ。」
「ロクロウ!余計な事を言わないで下さい!」
エレノアは優しいな。
でも皆、自分の事は
自分で守れる人達だから
手当なんていらないよね。
「副長!飯出来ましたよー!」
「あぁ、すぐ行く。」
「お腹へったね!」
「慌てると転ぶわよ、ラフィ。」
「心水心水♪」
「お主は飲む事になると子供のようじゃのぅ。」
ちゃんと笑わなきゃ。
皆みたいにちゃんと……。
「…エレノア?皆行っちゃったよ?」
「…ルナ、大丈夫ですか?」
「え…?」
「アイゼンの事…言い方はきつい所がありますが
きっと貴方を思って…。」
「わかってるよ。」
「ルナ…。」
「わかってるの。私は自分を守る力も
皆を守る力もないって…。」
「そんな事っ!貴方がいるおかげで私達は勿論、
アイゼンは……。」
「聖女の加護がなかったら……私……なんてっ…。」
「ルナ!」
酷い目眩に襲われて
私は柱にもたれかかった。
なんだろ…
貧血かな……。
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫……エレノアは皆の所に…。」
「だめです!こんな状態の貴方をおいて!」
「ちょっと酔っただけだから……。」
「何をしている。」
「アイゼン!ルナがっ…。」
「大丈夫、ちょっと酔っただけだから…
外の風に当たってくるね。」
タタッ
「ルナ……アイゼン、貴方もいい加減にして下さいね。」
「何がだ。」
「彼女を連れてきたのは、貴方です。
もっと大切にして下さい。」
「……。」
聖女の加護……
必要とされてるのは”私”じゃない。