~叶わない願い~
私達は浴衣に着替えて
早速お祭りに向かった。
美咲さんは
私の髪を綺麗にまとめてくれた。
皆が楽しんでる時まで
意地張って私本当に何やってるんだろ…。
「へぇ……孫にも衣装的な?」
「兄者さん…。」
「兄者、素直に可愛いって言いなさいよ。だから
そんな歳になっても彼女の一人もいないのよ。」
「美咲、てめぇ…。」
「ぶ!兄者言われてやんの! 」
「奏ちゃん!射的やろ!」
「あ、はい。」
「ぺちゃんこ!抜け駆けは許さん!」
たくさんの提灯で飾られた道は
赤い光で照らされて
とても綺麗だった。
お母さん達と歩いたお祭りも
こんな風景だったな……。
「わっ!」
「あははっ!奏ちゃんっ、自分に当ててどうするの!」
「大丈夫か?」
「は、はい…。」
パンッ
「うわ、美咲さんうま!」
「こんなんちょろいわよ。」
「何か打ち方かっこいいな…。」
美咲さんて
何でも出来ちゃうんだ…。
それに比べて私は……。
「きゃっ!」
「ぶはっ!奏ちゃん!何回自分に当てんの!?」
「跳ね返ったコルクを顔面で受けるとか器用だな。」
「いてて……私、ちょっとそこのベンチで休んでます。」
「一緒に行こうか?」
「大丈夫です。ありがとう、弟者さん。」
意味のない事だって
わかってるけど
どうしても比べてしまうの。
美咲さんと自分を……。