~モヤモヤ~






こんな気持ちになるなんて

図々しいよ。



私はおついちさんに

救ってもらったんだから。

私の恩人なんだから。



それ以上の感情なんてないんだから。






うん

大丈夫。






「もう皆が起きてくる時間…。」



平常心。

昨日は何も無かった。

うん

そうだよ。



「うー……頭いてぇ……。」


「弟者さん、おはようございます。」


「お前は次の日の事考えずに飲むからな。」


「兄者さんもおはようございます。」


「おう。」


「お二人共、お水どうぞ。」




おついちさんは

まだ起きて来ないみたい。


ちょっとホッとした…。




「あれぇ?おついちさんは?」


「昨日、結構飲んでたので……。」


「あの人も無茶すんな。」


「ちょっとシャワー浴びてくるー。」


「お風呂掃除してあるので、良かったら入って下さい。」


「ありがとう!奏ちゃん!」




そう言って

弟者さんは鼻歌を歌いながら

お風呂場に向かって行った。




「……なぁ。」


「はい?」


「昨日、おついちさんと何かあったか?」


「えっ…。」





何で…?

私何も言ってないし

そんな素振りしてないのに…。





「な、何でですか…?」


「何でだと思う?」



また

兄者さんの

意地悪な笑顔……



「意地悪っ……。」


「トイレ行こうと思って廊下出たらさ…。」


「っ……。」


「お前が泣きながら出てくるの、見たんだよ。」


「………。」





どうしよう。

何か言わなきゃ……。

何て言えばいい……?





「あ、あのっ……。」


「悪い事は言わねぇ。」


「………え?」


「あの人に、深入りしない方がいい。」


「どうして…?」


「あんなひょうきんな感じだけど、抱えてるもんが
大き過ぎんだよ。」


「それって、どういう…。」


「俺にしとく?」


「えっ……?」





そう言って私の顎を

クイッと持ち上げる兄者さん。



兄者さんの力強い瞳から

目が離せないよ……。
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