変わらない君
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「白石部長。木之下麗てどんな人すか?」
何やいきなりと返事をした横で、アイスをかじっていた謙也がゲフンゲフンとむせた。
謙也と財前と俺の三人でコンビニに寄った帰り道、唐突に財前の口から木之下さんの名前が出て驚いたのだろう。
「謙也さんの好きな人って聞いたんで…」
スマホをいじりながら聞く財前は、興味があるんだかないんだかわからない。
「ななな何で財前が知っとんねん!」
呼吸困難から復活した謙也が財前の肩をグラグラ揺らす。
「あんだけ大声でじゃれてたらそら聞こえますわ」
「どんな子とか財前は知らんでええねん!」
「俺は白石部長に聞いとるんすわー」
木之下麗はうちのクラスにきた転校生だ。優等生らしい雰囲気だが、成績が良いのかはまだよくわからない。前の学校と授業の範囲が違ったりするのだろう。でも体育より勉強のほうが得意そうに見える。
おとなしい彼女はぶっちゃけ四天宝寺では浮いている。転校してきて数ヶ月たつが、まだ友達らしい友達はできていないようだ。でも可愛い。字が綺麗で、左利きで、休み時間は本を読んでいる。何の本かは知らない。
以上、これ全部謙也情報。謙也からみた木之下麗情報は日々更新されているが、似たようなことを何度も聞かされるので正直ちょっと飽食気味だ。
「俺な、木之下さんて、エクスタシーやと思うねん」
「なんすかそれ、キショ」
辛辣やな財前。おい待て、なんで謙也まで引いてんねん。
「ちゃうねん。変な意味やなくてな。
木之下さんて基本に忠実な女の子やと思うんや」
謙也は可愛い可愛いと騒ぐが、木之下麗は芸能界にいるような圧倒的美少女というわけではないのだ。
ただなんというか、正統派とか、清純派とか、そんな言葉が似合う容姿、立ち振る舞いなのである。
背が高くも低くもなくて、細いけれど骨っぽくなくて、肩にかかる髪がサラサラしていて、派手ではないが可愛らしい顔立ちをしている。
そして頭が良すぎたり、運動神経が良すぎたりしない。真面目な優等生だがお高くとまったかんじがまったくなく、控えめだ。
男子高校生の理想というか、可愛いの基本のようなものが平均的に装備されたような女の子なのだ。
だから人によっては、木之下麗は面白味のないフツーの女の子と評される。
ただ、よろしゅうと声をかけて返ってきたはにかんだ笑顔にキュンときてしまう男子も一定数いる。謙也のように。
ここまで話してやっと財前は「なるほどっすね」と頷いた。よかった、キショいは撤回されたらしい。
謙也はいたたまれないらしくアイスの棒を齧っているが、特に反論するわけではなかった。
「なんや、女子から嫌われそうな感じっすね」
財前の淡白な感想は、正直まぁ、的を得ている。
謙也だってそこそこモテるのだから、見方次第では平凡なポッと出の転校生と噂になるのは面白くないという女子もいるだろう。まだ周りに馴染めていないため、尚更だ。
ここ最近木之下さんが嫌がらせを受けているのは気づいていたが、それを謙也に伝えるべきかは迷っている。
謙也がうまく立ち回れるかというと怪しい。
というか、そもそも2人は付き合っているわけではないし、木之下さんが謙也をどう思ってるのかも俺にはわかりかねる。
下手に動いて事態が悪化する可能性もある。
謙也は良いやつだから、幸せになってほしいのだ。
謙也の恋が強制終了しないように、しばらくは静観を決め込むことにした。
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