日日是好日
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エルの淹れてくれた紅茶を飲みながら、斜め上にある顔を見上げる。
私が一度死んでから5年経っているらしい。当時5歳だった子供達ももう10歳。ニアやメロに至っては成人している。
そんな中、5年前と全く変化が無いエルの姿にホッとしている自分がいる。
自分で淹れた紅茶を顔を顰めながら飲み終えたエルはじっとシュガーポットを見つめている。
「エル、ありがとう」
「急にどうしたんです?」
「子供たちのことも、Lの事も。この5年間」
「当然のことをしたまでですが……」
そう言ってくれる気持ちが嬉しいが、その半分は私が負うべき責であった筈だ。
「ですが、そうですね。もう、シキと離れる気はありません。次は死ぬ時も一緒です」
ニヤリと笑ったエルの真っ黒な瞳が、私を射抜く。
「……そういえば、生き返った私の寿命って」
「はい、私の残りの寿命半分をシキに渡しました」
あっさりと言うエルに思いっきり振り返る。エルなら死神と交渉でも何でもできただろうに。
人差し指で軽く唇を押さえたエルは、どこか遠くを見るような瞳をして話し出した。
「夫婦の寿命を全く同じにするなど、碌な死に方にならないと彼方此方から諫言はいただきましたが、2度も貴女に置いてゆかれるのは耐えられません」
あっと、思い当たる事がある。
夜一緒に休んでいる時、短い睡眠しか取らないエルは度々起きては仕事に出て行っていた。
かつての私なら、すぐにその後を追いかけていたけれど、今では意識が浮上するだけで、とても後を追えるような状況では無い。実際には起きてさえいないのかもしれない。そんな私の呼吸を確かめるように確認して、時にはそっと腕に手を伸ばし、脈拍を確認して、仕事に向かうエル。
未だに、本当に私が生き返ったのか、また死んでしまわないか、エル自身も不安なのだろう。
そう思うと、やっぱり申し訳なさが押し寄せてくる。
「シキ、そんな顔しないで下さい。そもそも貴女を生き返らせたのは、私の勝手、私の都合です。シキが気にすることはありません」
エルの言葉に掬い上げられて、エルの顔を見つめる。
少年のような、悪戯っ子のような笑みを浮かべたエルが、私の手からティーカップを取り上げると、こちらへ向き直り両手で優しく抱きしめてくれる。
ぽふんと、ベッドに倒れ込んだ私たちは、触れるだけのキスを交わして笑いあった。
5年もの歳月を何でも無いことのように言い、私に負い目を負わせまいとしてくれるエルの、優しい腕に包まれているうちに、再び微睡へと意識が落ちてゆく。
「おやすみなさい、シキ」
微睡の淵で聞いたエルの声もまた、眠そうな声をしていた。
私が一度死んでから5年経っているらしい。当時5歳だった子供達ももう10歳。ニアやメロに至っては成人している。
そんな中、5年前と全く変化が無いエルの姿にホッとしている自分がいる。
自分で淹れた紅茶を顔を顰めながら飲み終えたエルはじっとシュガーポットを見つめている。
「エル、ありがとう」
「急にどうしたんです?」
「子供たちのことも、Lの事も。この5年間」
「当然のことをしたまでですが……」
そう言ってくれる気持ちが嬉しいが、その半分は私が負うべき責であった筈だ。
「ですが、そうですね。もう、シキと離れる気はありません。次は死ぬ時も一緒です」
ニヤリと笑ったエルの真っ黒な瞳が、私を射抜く。
「……そういえば、生き返った私の寿命って」
「はい、私の残りの寿命半分をシキに渡しました」
あっさりと言うエルに思いっきり振り返る。エルなら死神と交渉でも何でもできただろうに。
人差し指で軽く唇を押さえたエルは、どこか遠くを見るような瞳をして話し出した。
「夫婦の寿命を全く同じにするなど、碌な死に方にならないと彼方此方から諫言はいただきましたが、2度も貴女に置いてゆかれるのは耐えられません」
あっと、思い当たる事がある。
夜一緒に休んでいる時、短い睡眠しか取らないエルは度々起きては仕事に出て行っていた。
かつての私なら、すぐにその後を追いかけていたけれど、今では意識が浮上するだけで、とても後を追えるような状況では無い。実際には起きてさえいないのかもしれない。そんな私の呼吸を確かめるように確認して、時にはそっと腕に手を伸ばし、脈拍を確認して、仕事に向かうエル。
未だに、本当に私が生き返ったのか、また死んでしまわないか、エル自身も不安なのだろう。
そう思うと、やっぱり申し訳なさが押し寄せてくる。
「シキ、そんな顔しないで下さい。そもそも貴女を生き返らせたのは、私の勝手、私の都合です。シキが気にすることはありません」
エルの言葉に掬い上げられて、エルの顔を見つめる。
少年のような、悪戯っ子のような笑みを浮かべたエルが、私の手からティーカップを取り上げると、こちらへ向き直り両手で優しく抱きしめてくれる。
ぽふんと、ベッドに倒れ込んだ私たちは、触れるだけのキスを交わして笑いあった。
5年もの歳月を何でも無いことのように言い、私に負い目を負わせまいとしてくれるエルの、優しい腕に包まれているうちに、再び微睡へと意識が落ちてゆく。
「おやすみなさい、シキ」
微睡の淵で聞いたエルの声もまた、眠そうな声をしていた。