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「『チェックメイトです』ではありませんよ」
無事確保された犯人達を見て、どこかホッとした空気が漂っていた寝室に唐突にワタリの低い声が響いた。
状況を察したのかニアとメロからの連絡媒体であるパソコンと携帯端末は、途端にアクセスの相手を失い無機質な音を立てる。
私とシキは恐る恐る、声のする方を振り向いた。
寝室の入り口にはワタリと駿河さんが荷物を抱えて立っていた。
「あ、お邪魔しています。……竜崎、僕はこの辺で。シキさんもお大事に」
ワタリの厳しい表情を見た月君が、逃げる様に去辞を言う、が甘いですよ月君。
「おや、夜神さんお構いもしませんで……ですが、病人のいる寝室で何をしていたかお伺いするまでは、お帰しできませんな」
静かに怒るワタリほど恐ろしいものはありません。流石の月君もワタリの視線から逃れる様に明後日の方向を向いた。
「シキさんはベッドに戻って休んでください」
「はい」
シキも、まずいと思ったのかワタリの言葉に素直に従う。
ワタリの後ろに控えていた駿河さんが紙袋をゴソゴソと探り額を冷やすための冷感シートをワタリに手渡す。
ワタリはそこから一枚を取り出すと、ベッドに横になったシキの額に貼り付けて、月君を促し部屋から出て行く。
「エル、リビングに居ます」
振り返りざま、それだけ言って駿河さんと月君を連れて廊下を去ってゆく。寝室のドアは開け放たれたままだ。
「エル……」
シキが済まなそうに眉尻を下げて私の名を呼ぶ。
「……仕方ありません、ワタリに怒られて来ます。元々私が仕事の道具を持ち込んでいたのが原因ですしね」
ベッドに横たわるシキに口付けを一つ落として、テーブルの上のノートパソコン2台と携帯端末を抱えて部屋を出る。
去り際に振り返るとシキはすやすやと寝息を立てて眠っていた。
ワタリの考えの通り、シキに無理をさせていたらしい。
「私が気付かないとは……やはり私も例外なく浮かれていたということでしょうか」
音を立てない様に静かにドアノブを摘み上げて戸を閉めると、ワタリの待つリビングに向かう。
リビングでは月君が所在なさげにソファーに座っていた。
「ワタリと駿河さんは?」
「ワタリさんは、お茶の準備に隣のキッチン。
駿河さんは、さっき居たもう一人だよな? ワタリさんに何か頼まれて携帯で電話掛けながら出かけていったよ」
……ワタリは、ニアとメロ、マットを確保する心算ですね。
ワタリに渾々と叱られた私たち5人は、ぐったりとリビングで伸びていた。
ニアにくっついて帰ってきたオパールとオニキスが私の服の裾を引っ張る。
そのキラキラした瞳を見て、何が言いたいのか察した私はワタリの目を盗んで子供達と共にリビングを抜け出した。
庭に出ると子供達がワタリから貰ってきたキャラメルやクッキーなどをハンカチの上に広げて、おやつの時間となる。
子供達の為のおやつの中に角砂糖が混じってるあたりがワタリらしいです。
今頃ニア、メロ、マット、月君もワタリのもてなしを受けている事でしょう。
角砂糖を積み上げながら私は子供達に笑いかける。
「世界最強唐辛子入り発煙筒、中々の効果でしたよ」
どんな効果があったのか、話して聞かせてやれば、子供達は歓声を上げて喜んだ。
唐辛子入り発煙筒、まさに子供の悪戯の様なそれはオパールとオニキスが作り出した悪戯品だ。
「が……メロとマットには不評でしたけれどね。さて、風が出てきました、室内に戻りましょか」