季節は春、過ごしやすい気温になってきた。
　ここ、ワイミーズハウスの子供たちも授業が終わると思い思いに外へと飛び出してゆく。
　楽しげに過ごす彼らを追い越して、丘の上まで歩く。

　シキと私の子供達も、ハウスの子供達と一塊になって遊んでいる。その中にはかつて、boyと呼ばれていた少年もいる。かれは、今はＦの名を継いでいる。呼び名はそのままエフ。
　ワタリはエルに肖ってみましたなどと言っていたが、きっと別の意味も有るのだろう。

　シキの夢見た通りに、ワイミーズハウスと私の自宅を繋ぐ丘では、桜の花が綻び始めている。　

　そして、メロ、ニアがＬの仕事を少しずつ請け負うようになって来ていた。
　ちなみに、マットはメロのワタリ役です。

　駿河さんもワタリとしての仕事が板について来て、今ではワタリの補佐をしながら、ニアと行動を共にすることも多くなっている。

　夜神月は案外農業が性に合う様です。文句も言わずに今でも農場で働いています。時折野菜を届けてくれますが、私は食べません。機械系にも強いのでどうやら重宝されている様です。

　弥海砂も、現在ハリウッドで活躍する第一線の女優です。未だに月君への想いは一方通行の様ですが……
　
高校２年生になった二階堂いえ、今は松戸真希さんも、今年の夏にはイギリスに留学してくるそうです。ワタリが楽しみに待っています。

　そうそうこの春、松田のバカが結婚するそうです。あの松田が……いえ、そうですね。松田さんも人柄は良い方ですから、それほど不思議なことでもないかもしれませんが……

　南空ナオミさんもFBIに復帰して、1回一緒に仕事をしました。相変わらず元気そうでしたよ。

　私はゆっくりとシキの墓標に語りかける。
　今日は一段と暖かいですね。この分だと今日1日で満開になるかもしれませんね……

　相変わらずＬの元には(勿論、コイル、ドヌーヴの元にも)膨大な量の依頼が入ってくるが、最近の私はこうして何もしないでシキと語り合う日を作っている。
　私の記憶の中のシキは5年前のままだ。私たちだけが変わってゆく。

　シキの墓標に舞い落ちた桜の花びらを手で払ってから、ゆっくりと立ち上がる。
「……また来ます」