Lの遠出
あなたのお名前
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時折休憩を挟みながらも何とか松戸氏の自宅近くまでやって来れた。紅葉の終わった街路樹の下を自電車を押しながら歩く。
何か甘いものがほしい……
「ばっかやろう!!!!!」
松戸氏の部屋に通されると、開口一番怒鳴られた。
馬鹿は松田です。私は馬鹿ではありません。目につく場所に置かれている甘味を勝手に拝借する。流石に糖分切れです。
「感染者を連れ回す奴があるか!!!感染者は人口密集地から離すのが常識だろう」
シキと真希さんは松戸さんの好意でシャワーを使わせてもらっている。取り残された私とboyは松戸さんの集中砲火を浴びせられている。
……やっぱりシキに残ってもらうべきだったでしょうか?
シキはあの穏やかな笑みで人を言いくるめるのが上手い。ニッコリと笑って、ごく簡単な言葉を掛けるだけなのだが、相手は何故かシキの掌で転がされる。
その様子はどこかワタリと似通ったものがある。ハウスの子供達の中でも取り分け癖の強いメロやニアでさえもシキにはコロリと丸め込まれてしまう。
「シャワーありがとうございました。真希ちゃんも大丈夫そうでしたよ」
サッパリして幾分か気分が良いらしい真希さんがニコニコと笑いながらシキの後を着いてくる。
「それは、良かったが、いや、よくないぞ。ちょっとこっちへ来なさい」
どうでも良いですが、松戸さん丸めた紙束で背中を叩かないでください。地味に痛いですよ。
隣の間に移動した私たちに早速松戸氏が声をかける。
「それで君たちはどうするつもりなんだ?
真希さんはいつ自分が発症するか分からない恐怖とずっと戦い続けているんだぞ?」
「分かっています。なので一刻もはやく抗ウイルス薬が必要となります。松戸さんお願いできませんか?」
シキの言葉に松戸氏は下を向く。
「……俺には無理だ」
暫くの沈黙。シキが何かを言う様子はない。静かに扉の向こうの真希さんとboyを見つめている。
「二階堂教授には可能でした」
私の焚き付けるような言葉で果たして松戸氏は動いてくれるだろうか。
「……俺は昔、作った薬で人を死なせてしまったんだ……」
「私も犠牲にしてきた命があります。……ですが、今は目の前の命を諦めたくはない」
松戸氏と視線が交わる。隣でシキが緩やかに微笑んだ。
あぁ、唐突に分かってしまった。
ワタリ不在の今、シキの命の期限が残りわずかな今、何故このような事件に関わったのか。
あなたの世界を広げなさいと、シキが言っている。
その世界にシキは存在しないのに。
そしてそれは、Kが恐れているものと同じなのだ。
何か甘いものがほしい……
「ばっかやろう!!!!!」
松戸氏の部屋に通されると、開口一番怒鳴られた。
馬鹿は松田です。私は馬鹿ではありません。目につく場所に置かれている甘味を勝手に拝借する。流石に糖分切れです。
「感染者を連れ回す奴があるか!!!感染者は人口密集地から離すのが常識だろう」
シキと真希さんは松戸さんの好意でシャワーを使わせてもらっている。取り残された私とboyは松戸さんの集中砲火を浴びせられている。
……やっぱりシキに残ってもらうべきだったでしょうか?
シキはあの穏やかな笑みで人を言いくるめるのが上手い。ニッコリと笑って、ごく簡単な言葉を掛けるだけなのだが、相手は何故かシキの掌で転がされる。
その様子はどこかワタリと似通ったものがある。ハウスの子供達の中でも取り分け癖の強いメロやニアでさえもシキにはコロリと丸め込まれてしまう。
「シャワーありがとうございました。真希ちゃんも大丈夫そうでしたよ」
サッパリして幾分か気分が良いらしい真希さんがニコニコと笑いながらシキの後を着いてくる。
「それは、良かったが、いや、よくないぞ。ちょっとこっちへ来なさい」
どうでも良いですが、松戸さん丸めた紙束で背中を叩かないでください。地味に痛いですよ。
隣の間に移動した私たちに早速松戸氏が声をかける。
「それで君たちはどうするつもりなんだ?
真希さんはいつ自分が発症するか分からない恐怖とずっと戦い続けているんだぞ?」
「分かっています。なので一刻もはやく抗ウイルス薬が必要となります。松戸さんお願いできませんか?」
シキの言葉に松戸氏は下を向く。
「……俺には無理だ」
暫くの沈黙。シキが何かを言う様子はない。静かに扉の向こうの真希さんとboyを見つめている。
「二階堂教授には可能でした」
私の焚き付けるような言葉で果たして松戸氏は動いてくれるだろうか。
「……俺は昔、作った薬で人を死なせてしまったんだ……」
「私も犠牲にしてきた命があります。……ですが、今は目の前の命を諦めたくはない」
松戸氏と視線が交わる。隣でシキが緩やかに微笑んだ。
あぁ、唐突に分かってしまった。
ワタリ不在の今、シキの命の期限が残りわずかな今、何故このような事件に関わったのか。
あなたの世界を広げなさいと、シキが言っている。
その世界にシキは存在しないのに。
そしてそれは、Kが恐れているものと同じなのだ。