Lの遠出
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電車の中ではシキと真希さんが小声で話しながら仲良く座っている。boyは真希さんの膝の上で開かれたノートを横から覗き込んでいる。
「ねえ、どこにいくの」
「松戸浩一と言う人のところ」
「 ! 会ったことある」
「それは助かります。あなたのお父さんが書いた本の共著者なので、面識があるとは踏んでいましたが」
私が声をかけると一瞬ビクつくのはどうしてでしょうね?
ピッタリとシキにくっ付くのも気に入りませんが……
前の座席に座る男が悲鳴を上げる。伝染するかのように大きくなるざわめきに、ぶら下がっていたつり革を手放す。
「降りましょう」
「公共の乗り物はもう使えないね」
赤いコートとカーキー色のコートを買ってきたシキは早速真希さんとboyに着せている。
「はい、エル」
差し出されたネイビーのコート。
そっと摘み上げてまじまじと見る。それを見てシキが笑う。釣られたように真希さんもboyも笑った。
「薄手だからそれほど邪魔にならないよ。サイズも大きめのだし」
私の手からコートを抜き取ったシキが、子供達の世話をする様にコートを着せてくれる。
「あったかいですね」
「うん。さて移動頑張ろうね」
3台の自転車が、ゆっくりと走り出した。
先頭を走る私にシキの声が掛かったのは日が暮れるよりは少し早い時間帯だった。
時間が惜しい私としては、夜間に距離を稼ぐことも考えていたのですが。
シキの視線が真希さんを指し示す。
少し休ませなければならないか……
近くのインターネットカフェに雪崩れ込む。簡単な食事を取ると、直ぐに眠ってしまった真希さん、その隣で同じように寝息をたてるboy。
トレイに大量のステックシュガーとホットコーヒーを乗せたシキが個室に戻ってくる。
ワイミーズ本部へのアクセスが拒否されているのを見て視線を落とす。
むくりと、起き上がったboyもこちらを見つめていた。
「心配いりません。予想の範囲内です」
シキから受け取ったコーヒーに砂糖を溶かしながら目を閉じる。ふと、肩に掛かる馴染んだ重み。
くたりと力の抜けた体が倒れないよう腕を回して肩を抱く。
真希さんの顔写真が出回って居る以上、当然遠回りを余儀なくされる事もある訳で、かなりの強行軍ではある。しかし、真希さんの為にも、出来るだけ早く松戸氏の所に向かわなければなるまい。
シキも私も注射器に保管されていたのはウイルスだと確信して居る。真希さんが発症しないのが、彼女が10日毎に打たれていた注射によるものなのかどうかは正直分からない。
ネットカフェの個室と言う狭い空間の中で思考は散漫して、漏れ出していく。
隣にある暖かい温もりが、今の私の唯一の拠り所だ。
「ねえ、どこにいくの」
「松戸浩一と言う人のところ」
「 ! 会ったことある」
「それは助かります。あなたのお父さんが書いた本の共著者なので、面識があるとは踏んでいましたが」
私が声をかけると一瞬ビクつくのはどうしてでしょうね?
ピッタリとシキにくっ付くのも気に入りませんが……
前の座席に座る男が悲鳴を上げる。伝染するかのように大きくなるざわめきに、ぶら下がっていたつり革を手放す。
「降りましょう」
「公共の乗り物はもう使えないね」
赤いコートとカーキー色のコートを買ってきたシキは早速真希さんとboyに着せている。
「はい、エル」
差し出されたネイビーのコート。
そっと摘み上げてまじまじと見る。それを見てシキが笑う。釣られたように真希さんもboyも笑った。
「薄手だからそれほど邪魔にならないよ。サイズも大きめのだし」
私の手からコートを抜き取ったシキが、子供達の世話をする様にコートを着せてくれる。
「あったかいですね」
「うん。さて移動頑張ろうね」
3台の自転車が、ゆっくりと走り出した。
先頭を走る私にシキの声が掛かったのは日が暮れるよりは少し早い時間帯だった。
時間が惜しい私としては、夜間に距離を稼ぐことも考えていたのですが。
シキの視線が真希さんを指し示す。
少し休ませなければならないか……
近くのインターネットカフェに雪崩れ込む。簡単な食事を取ると、直ぐに眠ってしまった真希さん、その隣で同じように寝息をたてるboy。
トレイに大量のステックシュガーとホットコーヒーを乗せたシキが個室に戻ってくる。
ワイミーズ本部へのアクセスが拒否されているのを見て視線を落とす。
むくりと、起き上がったboyもこちらを見つめていた。
「心配いりません。予想の範囲内です」
シキから受け取ったコーヒーに砂糖を溶かしながら目を閉じる。ふと、肩に掛かる馴染んだ重み。
くたりと力の抜けた体が倒れないよう腕を回して肩を抱く。
真希さんの顔写真が出回って居る以上、当然遠回りを余儀なくされる事もある訳で、かなりの強行軍ではある。しかし、真希さんの為にも、出来るだけ早く松戸氏の所に向かわなければなるまい。
シキも私も注射器に保管されていたのはウイルスだと確信して居る。真希さんが発症しないのが、彼女が10日毎に打たれていた注射によるものなのかどうかは正直分からない。
ネットカフェの個室と言う狭い空間の中で思考は散漫して、漏れ出していく。
隣にある暖かい温もりが、今の私の唯一の拠り所だ。