イギリス。ウィンチェスターの郊外にあるその場所では子供達が芝生の上で遊んでいる。
季節は初冬。冷えた風が吹くが日差しはまだ暖かい。
　庭先で子供達と話をしていたロジャーが此方に気がつく。
　私たちはboyを促してゆっくりと歩んだ。
「この子が、連絡のあった？」
　ロジャーの問いに頷く。
「ワタリも明日退院です。明日からまた連絡はワタリにお願いします」
私たちを遠巻きに見ている子供達の中に、ほぼ1年ぶりとなる娘と息子の顔が見える。
「おいで」
シキの声に駆け寄ってくる2人の後を、マット、メロ、ニアが歩いてくる。
「新入りか？」
メロの問いに頷いてふと、ロジャーと顔を見合わせる。
「名前をどうしましょうか？」
「明日にはワタリがいい名前を贈ってくれるでしょう？　ワタリの楽しみを奪っては後が怖いしね？」

シキの戯けた声に、ロジャーが笑う。　

「オパールとオニキス、マット、メロ、ニア、長いことありがとう」
ぎゅっと子供達を抱きしめたシキが言う。
　子供達の目線に合わせてしゃがんだシキはその顔を見渡して告げる。

「No matter for gifted it.you are arone.can not change the world.」

(どんな天才でも、1人では世界を変えることは出来ない)


「ですが、それがすばらしいところなんですけどね」

　シキの言葉の後を引き取り私も告げる。
　純粋で真っ直ぐで、けれど様々なことを知り始めている瞳が、私たちに注がれる。
　私はまた、シキと微笑みあった。

ハウスから自宅へ続く丘を歩く。嬉しそうにシキに纏わりつく娘と息子の姿が微笑ましい。
いつのまにか、あたりは夕焼けに染まっていた。




「話さなくて、良いんですか？」
子供達の寝顔を愛おしそうに覗き込むシキに声をかける。
後2日。それがシキに残された時間だ。
「明日には、日本の捜査本部に戻るよ。ワタリも退院してくるしね……」
逝くところは見せたく無いと、静かに言い切ったシキが書斎へ向かう。

書斎に置かれているノートパソコンの電源を入れながらシキが振り返る。


「これからの話をしようか。　エル」