Wの不在
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11月4日午前8時45分
三冊のDEATHNOTEと死神を従えて、ワタリの執務室を出ようとした私たちの耳にメールの受信音が響いた。
早速メールを確認したワタリが、Fの死を静かに告げた。
シキ、そしてF、まだ年若い2人の死が、ワタリに重くのしかかったのは明白だった。
それは、ワタリの長い不在から始まった。
キラーー夜神月を捕らえて後のことは日本警察に任せる事にした。
南空ナオミ、アイバー、ウェディ彼ら協力者に謝礼を支払うべくワタリに依頼するが、一向に返事がない。
「……ワタリ、どうした?」
「私が見てくるよ」
さっと駆け出したシキの後ろ姿を見送って、爪を噛んだ。何もなければ良いのですが……
「エル、救急車を、ワタリの意識がない」
早口の英語で入ったシキからの連絡に、手を動かしながら視線で死神に確認する。
手を上げて首を振る死神を横目に、私もワタリの部屋へと駆け込んだ。
遠ざかる救急車の音を見送って、本部へと戻るとリンゴを齧っている死神が自分は関係ないと、主張する。
「こんな事を言うのはオレの主義に反するんだけど……殺されるのも嫌だから言うが、あの爺さんはまだまだ長生きするぞ?」
隣でシキが、安堵の溜息を漏らした。
とは言え、ワタリは現在意識不明の重体。回復までにどのぐらいかかるだろうか?
「ワタリ不在が別のところから漏れる前に、ワイミーズナンバーには連絡を入れた方がいいでしょう」
「……うん、下手に隠し立てしない方が、かえって良いかもしれない」
[本日ワタリが倒れました。
今のところ意識不明の重体ですが、医師によると命に別状は無いそうです。
今後の連絡はロジャーもしくはLへ直接繋いでください。
L ]
Lの下に来る膨大な依頼の数々そして、他のワイミーズナンバーによって齎される情報はワタリの仲介があって初めて、私たちの下へ届く。ワタリの執務室には未解決の事件ファイル幾つも並んでいた。
キラの捜査のために、他の依頼はもうずっとストップしていた。この一年、シキが暇を見て手掛けたのが数件ある程度だ。
きちんと整理して並べられれいるそれは、キラ事件が終わったら……そう思い、ワタリが準備してくれていたものだろう。
「ここで、この依頼を片付けながら、ワタリの回復を待とうか」
シキが、そう言う。
既に日付は5日になろうとしている。
私はどうしたいのだろう……。シキに残された時間は後20日。シキの為だけに、時間を使うつもりでいた。
けれどシキは、私のしたい様にしたら良いと言う。どこかで一度だけ、子供達に会えたら、それで良いと。
情緒と言うものを半分ほど置き去りにして育ってしまった私には、こういう時どうするべきか分からない。
結局、未解決事件のファイルに手を伸ばした。
いつもの様に、未解決事件を片付けてゆく。といっても、どれもこれもキラ事件の時の様な高揚するまでの不可解さも無ければ、夜神月ほど、私たちを上手く欺くものも居ない。
いつもの日常がそこへ戻ってきた。ワタリがいないのと、シキの命の期限がすぐそこに来ていることを除けば……
けれど、そのまやかしの日常は私に安寧をもたらしてくれた。いつもの様にシキと事件を解決すること、多分私にはそれしか無かったのだ。
途中で何故か顔を見せた松田が、キラ事件が終わったのだから、シキと旅行にでも行けば良いとか、ワタリのお見舞いに行かなくて良いのかなど、戯言を言っていたが……
残り少ない時間をシキとどう過ごすか考えた時、気の利いた事など何一つ出来ない私に出来るたった一つの事は、その瞬間まで私たちの日常を続ける。唯それだけしか選択肢は残されていなかった。
折角顔を出した松田をただで帰すのも勿体ないと思った私は、既に解決して不要になった未解決ファイルの片付けや、フロアの掃除を言いつけた。
松田は不平不満を言いながらも、案外器用にそれらの雑用をこなして帰って行った。
ワタリが用意していた事件を全て解決へと導いたのはそれから10日後。
シキの命の期限も後10日。
三冊のDEATHNOTEと死神を従えて、ワタリの執務室を出ようとした私たちの耳にメールの受信音が響いた。
早速メールを確認したワタリが、Fの死を静かに告げた。
シキ、そしてF、まだ年若い2人の死が、ワタリに重くのしかかったのは明白だった。
それは、ワタリの長い不在から始まった。
キラーー夜神月を捕らえて後のことは日本警察に任せる事にした。
南空ナオミ、アイバー、ウェディ彼ら協力者に謝礼を支払うべくワタリに依頼するが、一向に返事がない。
「……ワタリ、どうした?」
「私が見てくるよ」
さっと駆け出したシキの後ろ姿を見送って、爪を噛んだ。何もなければ良いのですが……
「エル、救急車を、ワタリの意識がない」
早口の英語で入ったシキからの連絡に、手を動かしながら視線で死神に確認する。
手を上げて首を振る死神を横目に、私もワタリの部屋へと駆け込んだ。
遠ざかる救急車の音を見送って、本部へと戻るとリンゴを齧っている死神が自分は関係ないと、主張する。
「こんな事を言うのはオレの主義に反するんだけど……殺されるのも嫌だから言うが、あの爺さんはまだまだ長生きするぞ?」
隣でシキが、安堵の溜息を漏らした。
とは言え、ワタリは現在意識不明の重体。回復までにどのぐらいかかるだろうか?
「ワタリ不在が別のところから漏れる前に、ワイミーズナンバーには連絡を入れた方がいいでしょう」
「……うん、下手に隠し立てしない方が、かえって良いかもしれない」
[本日ワタリが倒れました。
今のところ意識不明の重体ですが、医師によると命に別状は無いそうです。
今後の連絡はロジャーもしくはLへ直接繋いでください。
L ]
Lの下に来る膨大な依頼の数々そして、他のワイミーズナンバーによって齎される情報はワタリの仲介があって初めて、私たちの下へ届く。ワタリの執務室には未解決の事件ファイル幾つも並んでいた。
キラの捜査のために、他の依頼はもうずっとストップしていた。この一年、シキが暇を見て手掛けたのが数件ある程度だ。
きちんと整理して並べられれいるそれは、キラ事件が終わったら……そう思い、ワタリが準備してくれていたものだろう。
「ここで、この依頼を片付けながら、ワタリの回復を待とうか」
シキが、そう言う。
既に日付は5日になろうとしている。
私はどうしたいのだろう……。シキに残された時間は後20日。シキの為だけに、時間を使うつもりでいた。
けれどシキは、私のしたい様にしたら良いと言う。どこかで一度だけ、子供達に会えたら、それで良いと。
情緒と言うものを半分ほど置き去りにして育ってしまった私には、こういう時どうするべきか分からない。
結局、未解決事件のファイルに手を伸ばした。
いつもの様に、未解決事件を片付けてゆく。といっても、どれもこれもキラ事件の時の様な高揚するまでの不可解さも無ければ、夜神月ほど、私たちを上手く欺くものも居ない。
いつもの日常がそこへ戻ってきた。ワタリがいないのと、シキの命の期限がすぐそこに来ていることを除けば……
けれど、そのまやかしの日常は私に安寧をもたらしてくれた。いつもの様にシキと事件を解決すること、多分私にはそれしか無かったのだ。
途中で何故か顔を見せた松田が、キラ事件が終わったのだから、シキと旅行にでも行けば良いとか、ワタリのお見舞いに行かなくて良いのかなど、戯言を言っていたが……
残り少ない時間をシキとどう過ごすか考えた時、気の利いた事など何一つ出来ない私に出来るたった一つの事は、その瞬間まで私たちの日常を続ける。唯それだけしか選択肢は残されていなかった。
折角顔を出した松田をただで帰すのも勿体ないと思った私は、既に解決して不要になった未解決ファイルの片付けや、フロアの掃除を言いつけた。
松田は不平不満を言いながらも、案外器用にそれらの雑用をこなして帰って行った。
ワタリが用意していた事件を全て解決へと導いたのはそれから10日後。
シキの命の期限も後10日。
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