𣜿葉
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「ビヨンド?」
ほぼ他人、と言うぐらいの親戚であるビヨンドが、両親に連れられて来たのはその頃だった。
問題があるから、何とかしてほしいと本家に泣きついて来た。と言うわけだ。
「はじめまして、シキ・ローレンス。実は僕、貴女の秘密を知っているんです。教えてほしいですか?」
ビヨンドと最初に会ったのは随分昔だ。祖父が開いたパーティーだった。
挨拶の後、彼はそう言いながらスカートの裾を引っ張って来た。
関心を買いたい子供の心理が見え隠れするその言葉に、同じく幼い私は頷いたのだ。
「ぼく、貴女が死ぬ日をしってるんですよ。あの若さなら病死かな、事故死かな?」
子供らしい無邪気さで残酷な事を言う子だと思った……
そして、そう言った話は人にはしない方がいいと忠告はしたのだが、果たして聞き入れたかどうか……
たしかに、あのまま成長したのなら、問題児になってるだろう。
「それが、どうやらビヨンドは、人殺しだと。バースデー夫妻が主張しているのです」
執事のオリバーが、言いにくそうに言う。
「それなら、本家ではなく、警察に言うべきじゃない?」
全く困ったものだ、とりあえず話を聞いてみるしか無いのかな。
ごたごたと、聞くに耐えない様な話がなされる。
ビヨンドの両親は彼を恐れていて、言葉を濁すから、余計話の筋が見えない。
この所、コイルとドヌーヴのところにくる依頼を片付ける為に寝不足気味だったのも重なり、彼らの話を聞くのを放棄した私は、オリバーに視線をおくり、説明を求めた。
「どうやら、ビヨンドさんが『あの人は何月何日に死ぬ』と言った人物が、本当にその日に亡くなった様ですね。それも、複数回。亡くなった人は皆病人などではなかった様ですーー死神と渾名されているとか」
それで人殺しか……
「私はまだ会った事がないけど、そう言う類の感が働く人は世界中には、珍しく無いんじゃない?」
「左様でございます。問題は……」
「何故彼がその能力を披露して、自ら嫌われる様な事をしたか? かしら……」
オリバーの言葉を引き継ぐと、彼はため息と共に頷く。
「ビヨンドは、家を出たいのかも知れない」
「彼をワイミーズハウスに紹介してみてはいかがですか」
一時でも、両親から離した方が良いのでは無いか。それは、私も考えた。そして彼の両親もそれを望んでいるだろう。
「うちで預かる事を、バースデー夫妻は望んでいるのでしょう?」
何故、ローレンスの家を頼って来たのか、そこにはバースデー夫妻のある思惑が透けて見える。
「それは、ローレンス家の執事として、拒否致します。お嬢様は今それどころではないでしょう。
それに、実は私買収されているんですよ。ワイミーさんを通して、お嬢様のお友達だと名乗る方から」
え? それってエル? 何? 初耳なんだけれど……
「知らなかったわ。オリバーは簡単に買収できるのね?」
「簡単に買収出来るんですよ。お嬢様の安全と引き換えならば」
随分安く買収されたみたい。どうやら私の周りには、過保護が多いらしい。
「それで、エルは何て?」
「さて、それは申し上げられませんが、ビヨンドを当家で預かるのは不可能です。
もし、そうなったら、私の胴体と首は離れ離れになってしまうでしょうから」
まったく、どんな脅しをしたんだろう。
「分かりました。後の対応をお願いしても良いかしら。ロジャーへは、私の方からお願いしておきます」
オリバーは徹底しているようで、ビヨンドと夫妻は、今日は近くのホテルに泊まることになった様だ。
話しはとんとん拍子で進み、明日ワイミーズハウスにビヨンドを連れていくことになった。ハウスに新しく入る子供としてはかなり年長者の部類に入るけれど、仕方がない。
夫妻は明日の朝早くに帰るそうで、ハウスには、私とオリバーで連れていく事になった。
「ロジャーさん、彼が昨日連絡したビヨンドです。よろしくお願いします」
翌日、ビヨンドを連れハウスに顔を出す。
以前とはどこか雰囲気の変わったハウスに、別の場所の様な気がしてきてしまう。
長居をするのはやめて、さっさと帰ろう。
ロジャーは、子供達と会って行くように進めてくれたが、断り、帰りの支度を始める。こんなに短い滞在は初めてだ。
「シキこれ」
帰り際、ロジャーと一緒に門のところまで見送りに来たビヨンドが、小さな紙切れを渡してきた。
「今回のお礼」
短くそれだけを言うと、くるりと背を向けて、ハウスの中へ入って行ってしまう。
「何だか、難しそうな子だな」
「はい、面倒をおかけして申し訳ありません」
ロジャーが、溜息を漏らしつつ肩を落とす。
「ロジャーさん、シキお嬢様を基準にするのは、お辞めになった方が宜しいですよ。お嬢様の方が、どちらかと言えば、普通からはかけ離れていらっしゃいますから」
グッと、何かを詰まらせた様な表情をした後、まあ、やれるだけやってみるが……と頬をかきながら請け負ってくれたロジャーに礼を言い、私とオリバーは家に帰った。
ほぼ他人、と言うぐらいの親戚であるビヨンドが、両親に連れられて来たのはその頃だった。
問題があるから、何とかしてほしいと本家に泣きついて来た。と言うわけだ。
「はじめまして、シキ・ローレンス。実は僕、貴女の秘密を知っているんです。教えてほしいですか?」
ビヨンドと最初に会ったのは随分昔だ。祖父が開いたパーティーだった。
挨拶の後、彼はそう言いながらスカートの裾を引っ張って来た。
関心を買いたい子供の心理が見え隠れするその言葉に、同じく幼い私は頷いたのだ。
「ぼく、貴女が死ぬ日をしってるんですよ。あの若さなら病死かな、事故死かな?」
子供らしい無邪気さで残酷な事を言う子だと思った……
そして、そう言った話は人にはしない方がいいと忠告はしたのだが、果たして聞き入れたかどうか……
たしかに、あのまま成長したのなら、問題児になってるだろう。
「それが、どうやらビヨンドは、人殺しだと。バースデー夫妻が主張しているのです」
執事のオリバーが、言いにくそうに言う。
「それなら、本家ではなく、警察に言うべきじゃない?」
全く困ったものだ、とりあえず話を聞いてみるしか無いのかな。
ごたごたと、聞くに耐えない様な話がなされる。
ビヨンドの両親は彼を恐れていて、言葉を濁すから、余計話の筋が見えない。
この所、コイルとドヌーヴのところにくる依頼を片付ける為に寝不足気味だったのも重なり、彼らの話を聞くのを放棄した私は、オリバーに視線をおくり、説明を求めた。
「どうやら、ビヨンドさんが『あの人は何月何日に死ぬ』と言った人物が、本当にその日に亡くなった様ですね。それも、複数回。亡くなった人は皆病人などではなかった様ですーー死神と渾名されているとか」
それで人殺しか……
「私はまだ会った事がないけど、そう言う類の感が働く人は世界中には、珍しく無いんじゃない?」
「左様でございます。問題は……」
「何故彼がその能力を披露して、自ら嫌われる様な事をしたか? かしら……」
オリバーの言葉を引き継ぐと、彼はため息と共に頷く。
「ビヨンドは、家を出たいのかも知れない」
「彼をワイミーズハウスに紹介してみてはいかがですか」
一時でも、両親から離した方が良いのでは無いか。それは、私も考えた。そして彼の両親もそれを望んでいるだろう。
「うちで預かる事を、バースデー夫妻は望んでいるのでしょう?」
何故、ローレンスの家を頼って来たのか、そこにはバースデー夫妻のある思惑が透けて見える。
「それは、ローレンス家の執事として、拒否致します。お嬢様は今それどころではないでしょう。
それに、実は私買収されているんですよ。ワイミーさんを通して、お嬢様のお友達だと名乗る方から」
え? それってエル? 何? 初耳なんだけれど……
「知らなかったわ。オリバーは簡単に買収できるのね?」
「簡単に買収出来るんですよ。お嬢様の安全と引き換えならば」
随分安く買収されたみたい。どうやら私の周りには、過保護が多いらしい。
「それで、エルは何て?」
「さて、それは申し上げられませんが、ビヨンドを当家で預かるのは不可能です。
もし、そうなったら、私の胴体と首は離れ離れになってしまうでしょうから」
まったく、どんな脅しをしたんだろう。
「分かりました。後の対応をお願いしても良いかしら。ロジャーへは、私の方からお願いしておきます」
オリバーは徹底しているようで、ビヨンドと夫妻は、今日は近くのホテルに泊まることになった様だ。
話しはとんとん拍子で進み、明日ワイミーズハウスにビヨンドを連れていくことになった。ハウスに新しく入る子供としてはかなり年長者の部類に入るけれど、仕方がない。
夫妻は明日の朝早くに帰るそうで、ハウスには、私とオリバーで連れていく事になった。
「ロジャーさん、彼が昨日連絡したビヨンドです。よろしくお願いします」
翌日、ビヨンドを連れハウスに顔を出す。
以前とはどこか雰囲気の変わったハウスに、別の場所の様な気がしてきてしまう。
長居をするのはやめて、さっさと帰ろう。
ロジャーは、子供達と会って行くように進めてくれたが、断り、帰りの支度を始める。こんなに短い滞在は初めてだ。
「シキこれ」
帰り際、ロジャーと一緒に門のところまで見送りに来たビヨンドが、小さな紙切れを渡してきた。
「今回のお礼」
短くそれだけを言うと、くるりと背を向けて、ハウスの中へ入って行ってしまう。
「何だか、難しそうな子だな」
「はい、面倒をおかけして申し訳ありません」
ロジャーが、溜息を漏らしつつ肩を落とす。
「ロジャーさん、シキお嬢様を基準にするのは、お辞めになった方が宜しいですよ。お嬢様の方が、どちらかと言えば、普通からはかけ離れていらっしゃいますから」
グッと、何かを詰まらせた様な表情をした後、まあ、やれるだけやってみるが……と頬をかきながら請け負ってくれたロジャーに礼を言い、私とオリバーは家に帰った。