とりあえず、警察関係者の概要をさらりと読み流す。
結構な人数がいて案外時間がかかってしまった。
FBIを何人動員出来たのかは、分からないが一人一人調べるとしても、余り成果は得られない可能性が高い。
「シキ、休めましたか？」
「うん、ありがとう。しっかり休めました。エルも少し休んだら？　その間は私が対応すれば良いし」
「まだ、いけますが、シキがそう言うなら、肩を貸して下さい」
　隣に座ったエルがもたれかかってくる。目は開いたままだけど、呼吸も心音もだんだん落ち着いてきた。
　休める時に休んでおくのも重要な事だ。特にエルは、走り続けるだけの力を持っている。それでも、人間である以上走り続けていては、能力は下がってくるのだ。



「遺書のようなものを書き残した？」
スッとエルが差し示した画面の中に表示されたマークや文章。この星のようなマークは兎も角、こちらの遺書らしき血文字は……
「Lしっているか、随分安直な挑発を仕掛けてくるね」
「キラは死の時間だけではなく、死の直前の行動も操る事が出来ると、仮定して動いた方が良さそうですね」
　頷いて、警察へ要望を伝える。
「局長、今回の犠牲者ですが報道関係には心臓麻痺以外の事は発表しないで下さい」
「キラが犯罪者によって何かをテストしている可能性があります。わざわざテレビや新聞で答えを教えてやる事になるかもしれません」
　まあ、警察や捜査員の使用しているパソコンをハッキングしてる様なら、もう情報は漏れてるかも知れないけれど。
「何のテストかな。これから動くための布石だとは思うんだけど」
「分かりません。暫くは様子を見るしか無いでしょう。キラが動けば動くほど、私たちは真相に辿り着ける。……けれどその為に犠牲が出るのはやりきれませんね」
「せめて、FBIが何か掴んでくれると良いんだけど……」
窓の外を見ると雪が舞っていた。
　床に座るエルの背中に、体重を預けてもたれ掛かる。
「あの子達は元気みたい。向こうの寒さにも負けず、メロやマットを従えて外で遊んでいるって」
「誰に似たのか、お転婆ですね」
　口の端を引き上げてエルが笑う。寒さに強いのはエルに似たんじゃ無いかな。私だって寒いのは嫌いですよ？ホントに？
　穏やかに、なんて事ない会話が続いていく。
「そうそう、夜になるとニアの部屋へ行く様になったんですって」
「あぁ、何となく分かりました。ニアの方が、寝相良さそうですからね」
それってエルの独断と偏見よね……




FBI捜査官全員死亡の知らせが届いたのはそれから数日後の事だった。