side シキ

某先進国で開かれたICPO ーー国際刑事警察機構会議ーー

「どうやらICPOも、ようやく重い腰を上げたようね」
「この事件、いくら私たちでも警察の手を借りないわけには行かないでしょう」
　新しい拠点は、広々としたワンフロアの物件だ。ICPOの会議の様子を見るだけで、直ぐに日本に向かう予定なので、必要最低限の機材しか置いていない。
　機材の向こうでワタリの声がする。
「Lはもう、動いています。
Lはとっくに、この事件の捜査を始めています」
「ICPOの皆様。Lです。
この事件はかつて無い大規模で、難しいそして……
絶対に許してはならない凶悪な大量殺人事件です」
騒つく会場もそのままに、全面協力、特に日本警察の協力を強く要請する。
「シキこちらも用意できました。犯人との直接の対決無事仕掛けられそうです」
リンド・L・テイラーとは、また随分ちょうど良い名前の人を選んだね？
「まあ、どの道……死刑になる予定の犯罪者でしたから。そうでなくとも、このままではキラに殺されるでしょうし。もし生き残れたのなら死刑は免除にするので、彼にとっても悪い取引では無いでしょう」
　私やエルの読みでは、彼は間違いなく生きてはいられないだろうけれど。
「やる事が子供染みているかな」
「ちょうど良いのでは無いですか？　これは、ある意味純粋過ぎる子供が犯人ですよ。　犯罪者を殺して無くせば世界は良くなると考えるなど、幼稚としか言いようがありません」
「恵まれた、幼稚な子供か……まあ、子供と言っても十代後半ぐらいだろうけれど……」
「そうですね。でも、だからこそキラは乗ってきます」
「これで反応がなければ、その方が怖いよ。私たち、追う者を始末しようともしないで淡々と犯罪者を裁き続けるのなら、本当に勝ち目はないかもしれないからね。
まあ、勝ち目の無い勝負をするタチでは無いけれど」
　ぐっと重ねられた手に力が込められる。ここ数日で少し隈を濃くしたエルが、前を見据えたまま言う。
「大丈夫です。必ずこの挑発に乗ってきます。それに、どちらかと言うと貴女は、勝ち目の低い勝負を平気でするタチだと思いますが？
私はそれが、それだけが恐しいです」

エルはそう言うけれど、それはお互い様では無い？