小さなプロローグ
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「もしも」の、話なんて意味のないことではあるけれど……
「では、連絡を入れておきました。いってらっしゃいませ。お嬢様」
「ありがとう。貴方達も良い休日をね」
イギリスの長閑な片田舎にある貴族の城の前でシキは微笑んだ。
艶やかな黒髪に、真夏の青空を写し込んだような瞳、まるで透き通るような白い肌。幼いながらも整った顔立ちをした少女は、藍色のサマーワンピースに身を包み、真っ白な日傘を携えている。
小さなトランクをタクシーの運転手に手渡した老齢の執事が一歩下がって深々とお辞儀をする。
まるで、はじめてのお使いに向かう子供を見守るように、10名程の使用人達が遠巻きに見ている。
今日から20日間、彼ら使用人は夏休みに入る。しかしながら、20日間もの間シキに一人暮らしをさせる訳には行かない、妥協案としてシキは毎年彼らの夏休み中とある施設にお世話になっている。
その施設の名前はワイミーズハウス。ハウスの創設者、キルシュ・ワイミーとシキの亡き祖父は旧知の間柄で、英国貴族の義務、ノブレスオブリージュとでもいうのか、シキの家も、ハウスへ度々寄付を行っていた。
最初の年は、夏も冬も執事のオリヴァーが付き添ってくれた。
しかし二年目からはシキ一人で行き来している。今年で三年目もう慣れたものだ。
見慣れた景色が過ぎ去り、暫くすると半年ぶりの景色が見えてくる。冬とは比べ物にならない程の生き生きと生い茂る草木。咲き乱れる花々。遠くからは子供達の笑い声が聞こえて来る。
ハウスの門を潜り、見知った顔の年長の少女に声をかける。
「こんにちは、エマ。またしばらくお世話になります。よろしくお願いします。ワイミーさんはいらっしゃるかしら?」
振り返ったエマは嬉しそうに笑うと抱きついてきながら、言った
「シキ! 嬉しいまたいっぱい遊びましょう!……あのね、ワイミーさんは今いないの、それがね、とっても問題児の子が入ってきたの。今その子にかかりっきりなのよ」
後半はどこか面白くなさそうに言いながら、ため息をつくエマに、近くにいた子供達も同調するように頷く。
「そう、先に挨拶したかったのだけれど仕方がないね。ありがとう。とりあえず荷物置いて来るよ」
新しい子、ねぇ。どんな子なのかなぁ、男の子かなぁ、女の子かなぁと考えながら、いつも使わせてもらっている部屋へと荷物を運ぶ。
小さなトランクとは言え、服など必要なものが入ったそれは中々に重い。
苦労しながら歩いていると、お昼の時間を知らせる鐘の音が響き出す。食堂のある方ではガヤガヤと賑やかな声が聞こえてきた。
急がないと、お昼食べ損ねちゃうかな。まぁ、お菓子を少し持って来てるから一食ぐらい抜いても平気だけれど……
ようやく、いつも使わせてもらっている扉の前に立ち、扉を開ける。
「あら?」
「何の用ですか?」
「では、連絡を入れておきました。いってらっしゃいませ。お嬢様」
「ありがとう。貴方達も良い休日をね」
イギリスの長閑な片田舎にある貴族の城の前でシキは微笑んだ。
艶やかな黒髪に、真夏の青空を写し込んだような瞳、まるで透き通るような白い肌。幼いながらも整った顔立ちをした少女は、藍色のサマーワンピースに身を包み、真っ白な日傘を携えている。
小さなトランクをタクシーの運転手に手渡した老齢の執事が一歩下がって深々とお辞儀をする。
まるで、はじめてのお使いに向かう子供を見守るように、10名程の使用人達が遠巻きに見ている。
今日から20日間、彼ら使用人は夏休みに入る。しかしながら、20日間もの間シキに一人暮らしをさせる訳には行かない、妥協案としてシキは毎年彼らの夏休み中とある施設にお世話になっている。
その施設の名前はワイミーズハウス。ハウスの創設者、キルシュ・ワイミーとシキの亡き祖父は旧知の間柄で、英国貴族の義務、ノブレスオブリージュとでもいうのか、シキの家も、ハウスへ度々寄付を行っていた。
最初の年は、夏も冬も執事のオリヴァーが付き添ってくれた。
しかし二年目からはシキ一人で行き来している。今年で三年目もう慣れたものだ。
見慣れた景色が過ぎ去り、暫くすると半年ぶりの景色が見えてくる。冬とは比べ物にならない程の生き生きと生い茂る草木。咲き乱れる花々。遠くからは子供達の笑い声が聞こえて来る。
ハウスの門を潜り、見知った顔の年長の少女に声をかける。
「こんにちは、エマ。またしばらくお世話になります。よろしくお願いします。ワイミーさんはいらっしゃるかしら?」
振り返ったエマは嬉しそうに笑うと抱きついてきながら、言った
「シキ! 嬉しいまたいっぱい遊びましょう!……あのね、ワイミーさんは今いないの、それがね、とっても問題児の子が入ってきたの。今その子にかかりっきりなのよ」
後半はどこか面白くなさそうに言いながら、ため息をつくエマに、近くにいた子供達も同調するように頷く。
「そう、先に挨拶したかったのだけれど仕方がないね。ありがとう。とりあえず荷物置いて来るよ」
新しい子、ねぇ。どんな子なのかなぁ、男の子かなぁ、女の子かなぁと考えながら、いつも使わせてもらっている部屋へと荷物を運ぶ。
小さなトランクとは言え、服など必要なものが入ったそれは中々に重い。
苦労しながら歩いていると、お昼の時間を知らせる鐘の音が響き出す。食堂のある方ではガヤガヤと賑やかな声が聞こえてきた。
急がないと、お昼食べ損ねちゃうかな。まぁ、お菓子を少し持って来てるから一食ぐらい抜いても平気だけれど……
ようやく、いつも使わせてもらっている扉の前に立ち、扉を開ける。
「あら?」
「何の用ですか?」
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