1章
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早朝。ゼロに顔を合わせずに家を出てきた。
朝食は取らないでコンビニでおにぎりとペットボトルを買って出勤。
会社では、友達がまだ腫れが引いてない目元に気づいて凄く心配してくれた。
「ハル!? どうしたのその顔!」
「あはは……。ちょっと失恋しちゃった」
そう言うと、え!?あのハルが!?と驚かれる。
あのハルってどのハルだろう。
「それにしても失恋って……」と絶句している友達に私は力ない表情筋を振り絞って笑って見せた。
「勘違い、しちゃったの」
ゼロのことは要所を濁して伝えると、りっちゃんは手を顎に置いて探偵ポーズで、うーん?と悩んだ。
そこから一転してニヤリと悪どい顔になる。
なんか嫌な予感しかしない。
「ははーん、読めたぞぉ? この恋愛フラグ探偵のりっちゃんが掴みました!」
「な、なにが?」
「ソイツ気付いてないのよ。恋愛って感覚」
「嘘だぁ。その言い方だと私に恋してる前提じゃん。そういうのは恋愛漫画で十分だし」
「やあねぇ。そんなの嘘か本当か分かんないじゃない。大体ねぇ、そういう奴は初恋拗らせてる奴が多いのよ」
「どんな大体よ……。まあ、それでも私とかありえないね」
「……ハルの自己評価の低さもどうにかしたいわね」
にしても初恋……初恋かあ。
私はウンウンと頷いてしまった。
ゼロが私のことが好きかは絶対無いとして、確かに初恋は拗らせてそうだ。
つまり、
「元から勝ち目が無かったってことか」
「元から? ソイツの初恋相手知ってたりするの?」
「うん、知ってる」
もちろんエレーナ先生。
年上で到底勝ち目はない存在である。
美人だし、良いこと言うし、ズバズバ言ってた私よりフォローの効いた言葉を言うし。
だって安室さんの姿で娘のシェリーを助けようとしてたくらいだもんね。
はぁ、と溜め息をつく。
「じゃあ今度合コン行かない?」
「えっー? りっちゃん彼氏居たでしょう?」
「いーのいーの。彼氏も同伴だから」
「ん"っ!? どゆこと!?」
「アイツ、我らがキューピッドのりっちゃんの為なら動くのよ。勿論私もね」
「へっ?」
「さあ!! セッティングは任せなさぁぁい!!」
「りっちゃぁぁんんん!?」
♦
優しい上司にも心配された。
上司は既に婚約者である。愛妻家でいつも奥さんの自慢話と愛妻弁当を欠かさない。
そんな温かい上司に心配された。
「男かい?」
「……え?」
「あ、いや。プライベートな事を聞いてすまない。聞き流して___」
上司は不味いことを喋ったと思ったのだろう。
でも私は心配してくれるのが嬉しかった。
「男です」
「……」
「優しい、人です。今頑張ろうとしているのに。その優しさにつけ込んで、告白して、相手を縛り付けるように困らせてしまいました」
そう言うと、上司は息をのんだ。
だけど数秒で、またあの優しい目付きに戻る。
「……私は。君の方が優しいと思う」
「? 何故ですか?」
「私なら告白したら後悔しない」
「まったく……。大丈夫。
『アンタ/君』は強い子だよ」
上司は…………友達と同じ言葉を呟いた。
上司や友達に励まされ、ようやく落ち着いた気がする。
そうだ。酒を買って帰ろう。
そんでゼロを笑わせてやるんだ。
私は……そのための役割じゃないか。