1章
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買い物に出掛けた。ショッピングモール。
何日もお父さんの服を着させる訳にもいかないし。
自分の車をゼロに見せると「お前……運転できたのか」と今までで1番驚かれた。失敬な。
まあ何回も試験に挑戦して合格出来たんだけどね。
なんて言うと「えらいぞ」と上から目線で褒められた。上から目線なのに推しなせいでニマニマが止まらなかった。咳をして上手く誤魔化したけれども。
ショッピングモールにつくと、やはりゼロが居るせいか、いつもと違う風景に見えた。
「ゼロ。迷子になったら迷子センターに……」
「行かないからな」
なんでだ。
『身長185cm〜、あむろとおる君。29歳の迷子さま〜。お越しのお客様が迷子センターにてお待ちです』とか物凄く楽しそうなのに。
まあ、本人には言いませんが。
だけど思ってることが顔に出ていたのか、ゼロに無言で頭をはたかれた。解せぬ。
ショッピングモールで、まずはゼロの衣服を買っていこうということになった。
「だが生憎と金がない。だがしかしだね、ゼロ君」
「……なんだよその口調」
「聞きたまえ。ゼロ君はユニクロでも似合うと思うんだ」
という訳でユニクロにレッツゴーしようとしたら、「お前……俺が金が使えることを忘れてないか?」と言われてビクッと肩が揺れる。
そ、そういえばそうだった。
すっかり推しに貢ぐ気満々だった。
「ゼロに貢ぎたくて」
「俺が本当のヒモになるからやめろ」
という訳で、ゼロが好きそうな服が目の前で買われてった。憐れ、私。
♦
ゼロが洋服……というか下着を買っている合間、私は暇だった。私も着いていこうとしたら、にっこり笑顔で「セクハラで訴えるぞ♡」と言われたのである。お巡りさんの目をしてた。私はブルブルと震え上がった。やだこの人怖い。
という訳で、ゼロが下着を買うまで洋服屋の前で待っていたのだが、ふと隣にあった雑貨屋さんが目に入った。
そこに置かれていたのは、桜が散りばめられた綺麗な缶である。
これ……警察学校組を思い出させるなあ。
洋服屋さんの中を覗くとゼロはまだ洋服を選んでいる姿が見れた。うん、まだ時間はある。
気づけばすぐに買っていた。
ゼロに見えないように個包装にしてもらって、脇に抱える。
そして洋服屋の前に戻ると、タイミング良くゼロが出てきた。
「待ったか?」
「いや?全然。むしろ24時間耐久できる」
「どんだけ俺はお前を待たせるんだよ……」
ゼロはくすくすと笑った。
♦
そんなこんなで楽しい1日が過ぎる_____と思っていた。
歩いている途中、前から向かってくる人混みに見知った顔があって思わず自分の表情が歪む。
あれは……高校の時のカースト上位組だ。
……無視しよう。
そう思ってゼロの手を引っ張って一目散にすれ違おうとしたとき……。
そこでやっぱり、ゼロのイケメンを隠しきれなかったのか、「あ!!同級生じゃん!」と名前は覚えられてないのに話しかけられる。
そこから自分をダシにゼロに話しかけてきた。
嗚呼もう。私をいじめてきたくせに。
今更どの面下げて喋ってきてるんだろう。
前に芸能人が言っていた言葉を思い出す。
『加害者はやったことを覚えてない』んだと。
私は終始無言だった。
ゼロは、私とカースト上位組たちの顔をキョロキョロと見比べて「本当に友達なのか……?」とこっそり聞いてくる。
友達な訳ないじゃないですか。
そう言いたいけど、ゼロが居る前で私がいじめられてたことなんて言いたくない。
私が悶々としている合間にも、目の前の金髪女子は話しかけてくる。主にゼロに。
「私ぃ、この子とはクラスメイトだったんですよ〜!!!ほら?この子って大人しくて優しいから〜、私たちが見守ってあげてたっていうか〜」
見守られてたっていうのは半分本当で半分嘘だ。
いつも私に罠を仕掛けて、私が失敗するのを見張られてた。
何も言い返せなくて、ぎゅっと繋がってたゼロの手を握ってしまう。
すると、ゼロの視線を感じた。
ゼロはため息をついた。
もしかして、嫌われたかな。
するとズキズキと痛む心。なんでだろう。コイツらに言われてる時よりも痛い。
だけどゼロが言う言葉は私が想像してたのと違ってた。
「こいつが大人しい? 君たちは一体何を見てきたんだ?クラスメイトだったんだろう? こいつは人一倍熱いヤツだよ」
ゼロは誇らしそうに笑った。
……その横顔で私は……とてつもなく救われて。
また惚れてしまった。
嗚呼もう、何してたんだろうね。
ここは私が言い返さなくちゃね。
私は、すぅっと息を吸うとカースト上位組たちに向き合った。もちろん目つきはもう違う。
もう敵じゃない。どうでもいい奴らだ。
「ごめん。私達これからデートだから」
そう言うと、カースト上位組たちとゼロが固まった。
ん? なんでゼロも???
と思ったら、目の前の人達は睨んできた。
どうやら私がこんなスパダリと付き合ってるのが許せないらしい。見下してたはずの私が上手くいっていることが許せないのだろう。
にしても……何でゼロも一緒になって睨むん??
私は、睨んでくるゼロを引っ張りながらそそくさとその場から逃げた。
♦
そのあとも視線からしてゼロはモテモテでした。
私の方はと言うと、やはりゼロの隣にいるので睨まれないものの、視線が痛い。
『あの人彼女なのかな?』という視線が。
自分がトイレに行ってる時は、ゼロが知らない女の子話しかけられてた。
すげーしか思わない。
ゼロが女の子に話しかけてる合間、妙な小競り合いには巻き込まれたくないので遠目に見てた。
ゼロ、チラチラこっち見んな。
頑張れ!の意味も込めてサムズアップすると、ゼロが額に青筋を立てながら、女子をかき分けてこちらにやってくる。
おっとーー???嫌な予感しかしない。
もちろん怒られました。