ツイステ夢 短編集
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大人になったら色んなことが出来るよ! とは一種の詐欺だと思う。
まず人間関係に気力を削られる。やらなきゃいけないことが増える。趣味がいつの間にか終わってる。
つまり____時間がない。
最後の言葉が一番しっくりくる。
もう少し経ったら余裕が出てくるんだろうけど。学生のときに余裕かましてテスト前にアニメやドラマを見ていた自分が恋しい。ぐうたらしたい。沢山眠りたい。ドラマ見たい。アニメ見たい。
それらは全て、時間が沢山あったらと考えてしまう理由である。
今日も今日とて時間はなく。
疲れ果てた私は死体みたいに眠りについた筈だったんだけど。
「なんでなん?」
いや~これどういうこと??
辺り一面は青い火の海だった。そしてその炎の中心には猫が居た。タヌキじゃない、とか言ってるけどタヌキよりは猫。
おかしいな。タヌキってのはイヌ科でイヌみたいな風貌してるって聞いたけどタヌキだったか。そうかそうか。新種のタヌキか。
もう一方で私以外にも人物は居た。私より若い女の子。十代くらいかな? そんな女の子は私と同じようにここに誘拐されたらしい。
あれ? 誘拐で合ってるよね。だって寝てる合間にここに来てたんだもの。知らない所だし。
だけど、女の子は知ってそうだった。怯えた様子はなく、逆にはしゃいでいた。
「ついすて」?やら「ぐりむ」? とか目をキラキラさせながらブツブツ言っている。正直怖かった。
まあ誘拐されたのなら不安定にもなるよね。わかるわかる~と、私はその子に「頑張って一緒に脱出しようね」と声をかけた。
しかし彼女は振り返ったと同時に怯えた顔をしてきた。
ブツブツ言ってた言葉の意味を聞きたかったのに。「ついすて」とやらは何なんだ。新手のマルチ商法か。
名前聞いたら嫌な顔をされて、挙げ句に遠巻きにされた。完全にGに対する極意を私に行っていた。なんでだ。
さらに「ひぇっ」という言葉にもなってない言葉が襲ってくる。そこまで怯えられていることにクリティカルヒットォォッ!! と誰かが叫んだ気がした。
そんなこんなで始まった誘拐物語。
誘拐犯たちに痛快な仕返しをし、華麗に逃げまくるーーー訳でもなく。
状況判断してから逃げようと思ってその場に待機していたら、これからサンバ始めそうな烏みたいな人に捕まった。
ちなみに女の子は先にここから逃げていた筈だが、サンバおじさんに捕まったみたいだ。サンバおじさんと共に私の所に来たし。
その割にはウキウキとしているのが不思議だけど。私と目が合うとまた怯えた顔になった。
「どうやって入ったんです? 怒りませんから」と聞かれるけど私は知っている。
怒らないと言って本当に怒らなかった人間など居なかったことを。というかそっちが誘拐したのでは?
そう問うと「は?」という雰囲気を出された。意味が分からない。それに「こんな若い女の子まで……」というと「彼女は黒い馬車から正規に来たんです。貴方とは違うんですよ」と言われた。
黒い馬車ってなんぞや。正規ルートってなんぞや。私は裏ルートで入手されたってこと??
益々怪しい奴め。解せぬ。
目の前の怪しい男は私が喋る度に眉を潜めた。その様子に主犯はこの人じゃないのか? と、疑っていた気持ちが薄まっていく。
反対に女の子は私を睨んできたので実は裏犯人なのでは?? そう思ってしまった自分をちょっと治める。
大分混乱しているせいか、会う人全てを疑ってしまいそうだ。
とりあえずお口をチャックしていたのだが、気付けばプロジェクトマッピングで人の顔が写した鏡の前に連れて来られていた。
それと同時に若い人が大勢いた。舎弟? 舎弟なのね?? 誘拐したのは若い者を使う大きな組織だったの? もしや半グレ組織??
考えれば考えるほど心臓がバクバクとうるさい。早く逃げ出さないとバラされる。
きっと東京湾に沈められるんだ。
しかし、サンバおじさんは舎弟達を何故か引き下がらせた。
益々意味がわからない。
気を紛らわそうとプロジェクトマッピングへと視線を向ける。
へぇ~最近の科学は凄いもんだ。おかしいな。鏡が震えている。と思ったら自分が震えていた。
女の子は若干私から離れた位置にいる。確かに謎に震えてる女から距離を取りたくなるのは分かる。
女の子はまるで鏡がなんなのか分かっていたみたいだった。女の子は自称学園長のサンバおじさんが口を開く前に鏡の前に立つ。
鏡の中の顔が口を開いた。
「この者には魔力がない」
そうか。分かったぞ。
ここは宗教組織だったか。なるへそ、と頷いているとサンバおじさんに溜め息をつかれる。
「貴方、わざと口に出してます?」
「バレました?」
「バレるも何もわざとらしいんですよ。あとここは学園です」
「……またまた」
ハハッと乾いた笑みを浮かべてしまう。
だけどサンバおじさんは終始真面目な雰囲気を出していた。
その雰囲気に逆にこっちがタジタジになる。まさか本当に?? 誘拐犯では無いと言うの??
と、そこまで来て思い出す。
私は2次元とドラマをこよなく愛するオタク。そして最近知った言葉がある。
「トリップ……?」
一瞬、隣の女の子の肩がぴくりと動いた気がした。
そこで悟りましたとも。
あ、これ私が知らない何かにトリップした奴だと。そして今までの女の子の行動は、女の子がこの世界が何なのか知っているのを示唆していたのだと。
ということは女の子は大方「自分だけトリップしたかったのに」みたいなことを思っているに違いない。理不尽な嫌われ方だが、その気持ちは分からなくもないので微妙な気持ちになる。でもそれで怯えた表情を浮かべるだろうか??
へー、ふーん、そうか……。どうやって帰ろう。帰りたい。
そのとき、ボーッとしていた私は気付かなかった。
鏡の中の顔は目を見開いていた。
「こやつ……!?」
たちまち雰囲気が変わった鏡にサンバおじさんも目の色を変えていたことに。
「そなたの魔力は次元を超えている……。抑え込まなければ周囲に多大な影響を与えるだろう。よって尊大な魔女となる素質が見える」
「ほう……。下賎な侵入者かと思いましたが、よりにもよって闇の鏡にそんなことを言わせるとは」
____どうです? ここで魔法使いとなりませんか?
訳も分からず言われた言葉はやっぱり理解出来なかった。
けれども、何となく「高校生に混じってもう一回勉強頑張りましょう」って言われたのは理解した。大人が高校生に混じる??
私はにっこり微笑んだ。
ふふふ。
「遠慮します」
あ、でも魔法は習いたい。
*
というのが数週間前にありまして。
今じゃ時間が早く感じること多々あり。なんせ____毎日が充実し過ぎている。
「ハルさん、またシャンデリア壊れてたってさ」
「え、また?」
「グリムとエーデュースらしいね」
ハルさんも大変だね~、と笑う彼はここの学生だという。
名前はケイト・ダイヤモンド君。
最近ハマっているものはマジカメらしく、私にこの世界について教えてくれた1人だ。
……で、なんで私が誘拐犯だと疑っていた内の1人と仲良くしているか。
あのあと校内案内とか書類とか諸々出されたのだ。あれは……うん。学園長の本気を見てしまった気がする。
まさか、自称学園長のサンバおじさん呼ばわりしていた人が本当に学園長だったとは。
心の中で失礼な呼び方をしてしまったことにお詫びした。
話に戻るが、とにかく私はここのことを知った。そして私が何らかのアクシデントでここに飛ばされてしまったことも。
女の子は監督生という役柄をGETし学園に通うことになり、反対に私は大人なので校務員もどきをすることになった。
校務員の仕事は前に担当していた人に教えて貰った。衣食住だが、衣と住は監督生と同じだった。食はまだ信頼していないので自炊をしている。監督生の方は毎日外食だったが。
それと監督生から相変わらず避けられている。
この間はビックリしたものだ。
どうやら私は悪い噂を流されているようで、ついさっきなんかは「魔力量くらいで驕ってんじゃねーよ」と知らない男子生徒に言われた。
皆一様に監督生が言っていたと言うものだから疑いたくはなる。
けれど結局は本当に監督生が言っていたかは見ていないので、こちらも何も言えず仕舞いだった。
しかし疑問に思って欲しい。私はどうやって撃退しているのかを。
「そりゃあハルさんが暴力的なまでに____」
ケイト君がニヤニヤと微笑みながら口を開いたときだ。
「おいそこのババア!! いつまでここに居んだよ!!」
ガタン!と開けられた扉に肩が跳ねる。
ズカズカと入り込んできたのは見知らぬ男子生徒だった。
___と、ここまでがテンプレ。
「ケイト君、奥行っていつもの」
「え"。また!?」
「いーからいーから。あとでお菓子あげる」
そう言うと「しょうがないなぁ」という顔をしながら奥に入っていく背が見えた。
言い忘れていたが、ここは食堂の使っていない所の一部の部屋である。
ついでに言うと厨房もある。
もうここで分かるね?
私は青筋を立てている男子生徒にニッコリと微笑んだ。
「話し合いをしましょうか」
_____と言いたい所だけど。
同時に奥からケイト君が帰ってくる。
ケイト君の手には1つのカレーがあった。スパイスから作った本場のカレー。
そのカレーは男子生徒の前にあった机にコトリと置かれた。
「その前に、お腹空いてません?」
とりあえず食ってから物申せ。
*
意気消沈になった男子生徒の背にバイバイしていると、後ろからププッと笑い声が聞こえてくる。
「相変わらずハルさん容赦ないね」
犯人はケイト君だった。
「え? これ結構優しい方だけど」
「そうじゃなくて……」
ハルさんの料理、食べたことが無い奴ばっかりでしかも中毒性があるんですよ……と遠い目で言われた。
まあ魔力も込めて作ってるからなぁ。私の魔力量が溢れない為に。
どういうシステムか、溢れると周囲に怯えられることが分かったのだ。
ケイト君は遠い目をしている。
なんだその目は。目が褒めてないよ、と思わずクスッと笑ってしまう。
するとケイト君は目を見開いたあと、その場にズルズルとしゃがみこんでしまった。
両手で顔を覆ってしまった為に顔色は伺えない。
「あー……不意打ち。せめて早く生まれたかった」
なんで?? 言ってる意味が分からない。
早く生まれてもこの世界には私が作った料理は存在しないと思うけど。そう言うと人差し指と中指がパカッと開く。
水晶のような綺麗な緑色が私を映した。
「言っておくけど、こう思ってる野郎たっっっっくさん居ますから」
「へぇー。じゃあ今度パーティーでもしますか」
「ねえハルさん意味分かってる???ねえ分かって言ってる??」
いや全然。
♦
「おじたん、チェカに最近構ってくれないの」
「じゃあこれ渡してみる?」
「わぁー! これなーに?」
「わたパチ」
「わ???」
___とりあえずおじたんに渡すといいよ。きっと喜んでくれるよ。
そう言われたハルおねーたんの言う通り、チェカはおじたんに食べて貰ったんだよ!
おじたんは尻尾も耳を逆立てながら、とってもはしゃいでくれたんだ!!
拳を何度も机にぶつけるほど美味しかったんだね!
目もおっきく見開いてたんだよ!
ありがとう!おねーたん!
♦
「あ!! 猫にスパイス類あげちゃいけないんだった!!」
砂ライオンに悪いとは思ってない。