まさか本物になるとは思わないじゃない
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人間の姿に擬態した私は、一丁前に足を組んで優雅に珈琲を啜っていた。
そして手に取っているのは、そこら辺のチンピラから強奪した金で買った新聞。
スタバみたいな若者向けの飲食店で、ホットコーヒー飲みながら真面目そうに新聞広げてるお姉さんだと思うだろ????
……英語だらけで読めない。
おかしい。中学の時の英語は4だった。
だが、写真は分かるぞ。
多分これは……私だな。翻訳コンニャクが欲しい所だが、読める単語だけ拾っていく。
えーーっと、、オンリー、あらいぶ?
ライブは読めるぞ。生放送って意味だろ?
オンリーは一つだけってことだから……。
……どういうことだこれ。
「一つだけの生放送????」
そう独り言をごちると、ブハッといつの間にか相席に座っていた客が鼻からホットコーヒーを吹き出す。汚いな!?!?
「嬢ちゃん、文字が読めないのか?」
「え…………まあ……ハイ」
相席の人は、片腕に赤髪と特徴的なコスプレをしていた。元の世界でも見たことがある。なんだっけ……赤髪のシャアだった気がするわ。
ちなみに今聞かれた感じで文字を起こすとなると「おまwwwww文字がwwww読めなwwwいwwwのかwwwww」って感じ。
「ここと、……ここは読めるんですけどね」
「だっはっは!!!! YesとNOだけじゃねーーか!!!」
シャアさんは窒息になりかけるまで笑い続けた。流石の私もヒクヒクと口角が上がってしまう。もちろん笑いそうになって……ではなく、羞恥心のほうで。
「じゃあ教えて下さいよォ。お兄さん、その感じだとスラスラ読めるんでしょ?」
私が頬っぺたを膨らませて言うと、シャアさんは笑い涙を人差し指で拭いながら「まあな」と当然だとばかりに言ってくる。なんかムカつくな……。そこで私の無駄な対抗心が働き、なんかちょっと難しそうな単語もある長文英語を指さし、「じゃあここ。全部言えますか?」とニッコリ笑みを貼り付けて聞いてみた。
しかしシャアさんは「ああ、読めるぞ」と言って見せた。
シャアさんは真面目な顔をして____口を開いた。
「書いてあることはこうだ。『全世界に激震が走る。真の天竜人が現れたと、放送を見た者たちは異口同音。天竜人はそんなバケモノは知らないと語るが、悪魔の実でもない本物の龍とは如何に? 天竜人・海軍・世界政府……だけでなく海賊までもが血眼になって探している。その理由は黒龍ミラボレアスが言った《我を倒した者のみ従おう》という言葉だろう』と」
シャアさんは言い終わると、「どうした? 難しい顔をしているぞ」と微笑んできた。対して私は、ボーッとした頭で「英語が難しかったんです」と言って退ける。
どーーーーやら私はやらかしたらしい。
確かに『あれ?海軍???なんか聞いた事あるような』とは思ったさ。目の前のシャアさんも見覚えあるしさ。
なんだここ……ワンピースの世界やん。
さらに言うと、ミラボレアスになった時の私って……。
まったく違うこと喋ってるやん。
まあでも、エースを助けられたからいっか。
そう思って、ズズズ……とホットコーヒーを猫舌なので少しずつ啜る。
ここがモンハンの世界じゃないとすれば____ハンターが死んだらキャンプ場に転送されるというシステムも当然あるわけが無い。つまり海軍と戦った時、私は少なからず人を殺したことになる。罪悪感がある訳じゃない。なんなら今更ながら罪悪感が襲ってきている。だけど中身が半分ドラゴンなせいか、ちっとも心は痛くなかった。まるで本当に他人事のような_____と、そこまできて少しばかり自己嫌悪になる。
シャアさんは無言になった私を面白そうにずっと見ていた。
認めたくないものだな、自分自身の若さ故の過ちというものを……。
「それで? 嬢ちゃんは、その黒龍と知り合いなのか?」
私が珈琲を飲み終わって机に置いた時、シャアさんはそう問うた。やはりそう来たか。
「いんや? 生意気なヤツだな〜とは思いましたね」
と、嘘を言ってのける。
シャアさんは目を丸くさせると「だっはっは!!」と、また笑ってみせた。
だが、ひとしきり笑い終わったあとに真面目な顔をするシャアさん。
「なあ、これは唯の独り言なんだが……。もし黒龍ミラボレアスに会ったら言って欲しい。『俺の大切なものを助けてくれてありがとう。会ったら宴をやろうじゃないか』とな」
思わずシャアさんの顔をパッと見てしまった。
するとウインクしてくるシャアさん。
宴……。
うた、げ……?
「酒が飲める?????」
「ああ」
「タダ酒????」
「勿論だとも。なんなら最近入手したやつなんだが、世界に3つしかない____」
その言葉を待ってましたとばかりに私は真顔になる。
そして私は息を吸った。
ある言葉を吐くために。
「行きます」
「「「お前が黒龍だったんかい!!!!」」」
いつの間にか店内に座っていたシャア海賊団たち全員にツッコミを入れられた。